さっきと同じように階段を二段飛ばしに駆け下り、最後は四段飛ばして着地する。
急いでトートバッグと自転車を救出する。ハルカが私を追って階段を降りてきているのが見えた。追いついたハルカが膝に手を着いて息をしながら笑う。
「ミクはいつも急いでるね」
「誰のせいよっ!」
「おれのせいです。ごめんなさい」
素直に謝ってくるとかずるい。もう少し責めさせろ馬鹿。
「……別に。もういい」
一言だけそう言うと、私は自転車のスタンドを強く蹴った。勢いよくグリップを押したが、カクンと体がつんのめった。眉根を寄せて振り返るとハルカが自転車の荷台を掴んでいた。
「……一応聞く、アンタ何してんの」
「少し待ってほしくて荷台を掴みました」
「『見て分からないの?』って顔で答えんな! てかそれ以前に掴むな!」
だって、とハルカが困ったように笑う。その顔に嫌な予感がした。
「……まさかとは思うけど、また迷子なの?」
「へへ、大正解。家まで送ってくれると嬉しいな」
スゥ、と息を吸いながら天を仰いだ。
「……後生だから勘弁して」
「『後生だから』って格好いい言葉だよね。有山浩道の『本と私と王子様』でヒーローが使っていたよ、『後生だから生きてくれ』って」
「そのシリーズ全部持ってる! あんたも好きなの? ……じゃなくて、今すぐ手を離せ手をっ!」
「お願い。おれ、すごく困ってるんだ」