淡々とそう言って片足をペダルに置き、地面を強く蹴った。
「うん、バイバイ。未来のミク。また会えたら嬉しいな」
ぶんぶんと手を振るハルカを一瞥して、前を向いた。
また、なんてきっとないと思うけど。
「何なのあいつ」
ぽつりとつぶやいてから、振り向かずにペダルを強く踏みしめた。
辺りはすっかり暗くなっていて、自転車のライトを足で蹴って点けた。ヴーン、と低い音と共にペダルが少し重くなる。少し冷たい空気が火照った頬をなでて心地よい。
ポコンと短い電子音が鳴った。トークアプリに新着のメッセージが届いた音だ。信号待ちのタイミングでポッケからスマホを取り出し確認すると、それはお母さんから届いたメッセージだった。
『何時に帰ってくる? 高木さんが来てるから早く帰ってきてね』
画面の眩しさに目を細めながらきゅっと唇を一文字に結ぶ。
喉の奥がぎゅっとしまって一瞬息ができなかった。
なんとか短く息を吐けば、胸の中にコントロール不能なドロドロした真っ黒が一気にあふれる。どんどん胸の中を圧迫し、重く重く沈めていった。