「その日作家さんと打ち合わせあってさ。悪いけど今年も当日の夜に寄るよ。誕生日探しは三人でやって」
分かったわ、とちょっと残念そうな声が聞こえて申し訳なさが顔を出す。
その時電話の奥から「電話、お姉ちゃん?」と明るい声がする。ガサゴソと衣擦れの音がして今度はクリアな声で『お姉ちゃん久しぶり!』と届く。
「久しぶり、明日香」
今年で十歳になる妹の明日香は、私が高三の夏に生まれた。お母さんと高木さん────お父さんが結婚して四年後に生まれた腹違いの妹だ。
私はお父さん似だと思うんだけれど、会う人全員が一番私にそっくりだという。それが妙に気恥ずかしくてかなり嬉しかった。
明日香と世間話をしていると今度はお父さんが帰ってきたらしい。「俺にも代わって」「まだ私が話してるの!」「ちょっと明日香、スマホ乱暴にしないで!」と何やら揉め始めて耳元が賑やかになる。
相変わらず仲良くやっているようで一安心だ。
「とにかく、誕生日会の日は夜に帰るから。必要なものとかあったら買ってからいくから、メッセージ送っといてってお母さんに伝えて」
『分かった! じゃあねお姉ちゃん!』
『あ、明日香待って待って! 未来〜、お父さんだぞ。今年も帰ってきてくれるんだって? 嬉しいなぁ、お父さん幸せ。ありがとね』
「はいはい、じゃあね」