────十四年後。
「おーい、高木。新人賞の原稿、もうチェック終わったのか?」
「すみません、まだです!」
「さっさとしろよ、他の奴らも回し読みすんだから」
はい、と返事をしながら、手早くデスクの上の荷物をかき集めてカバンの中に突っ込む。
「先生から原稿受け取ってきます!」
うぃー、と先輩たちの返事が返ってきて、小さく頭を下げて会社を飛び出した。
一年就職浪人して児童書をメインとする出版社に就職できた私は、四年間営業部で経験を積んだ後ついに去年から念願の編集部に配属された。
仕事は毎日学びと失敗の繰り返しだけれどやりがいもある。自分が担当した作家の新刊が発売された日に書店で並んでいるのを見た時の感動は今でも忘れられない。それを見るとどれだけ残業しても、どれだけ編集長からダメ出しを食らってもがんばれた。
ただ、家に返ってそのままベッドにダイブした時、たまに昔みたいな息苦しさを感じる時がある。