あちこちを二人で走り回って、気がつけば知らない公園にたどり着いていた。

道は綺麗に整えられているけれどトンネルみたいに木が空を覆い隠す。頼りない街灯だけが足元を照らして、森の奥にいるような気分になる。

ハルカの手を握りなおすと、ハルカもキュッと力を込めた。


「ねぇミク。なんかどきどきするね」

「だね。なんかこの先に、魔女の家とかありそう」

「子供を食べるこわぁい魔女だよ」


ひひひ、と笑ったハルカに私も笑う。

二人で森を突き進む。そして。


「わぁ!」


森が途切れた先にあったのは、怖い魔女の家よりももっとドキドキするもの。


「きっと人魚が住む湖だよ……!」


ハルカが声を弾ませる。

私は目を見開いてそれを見つめた。

鏡のような水面に夜空が反射して、まるで星が降ってきて湖に積もったようだった。よく見ればただの藍色じゃない。西の空はギリギリ夕日がまだ残っていて、檸檬色に光っている。そこから橙、ピンク、赤、紫少しずつ色が移り変わってやがて深い夜空の色を作る。映る星の粒はぎらぎらと光っている。その一粒一粒がキーンと音を発しているみたいだ。その中に、ぽちゃんと落ちてきたみたいな三日月がゆらゆらと揺れている。

私は息をするのも忘れ、食い入るように湖を泳ぐ月と星を見つめる。

本当に、おとぎ話みたいな景色だった。

私の手を握っていたハルカが、キュッと力を入れて握ってきた。我に返ったようにハルカの顔を見る。


「ミク、あれみて」


ハルカに手を引かれ、私達はギシギシと音を立てて軋む船着き場に立った。

まさか、と思ったその時。


「船乗りたい!」

「いやいやいや、絶対やばいでしょこれ!」