「勇者の剣と賢者の盾を拾ったら、次は何が出てくると思う?」
「ラスボス? 魔王とかドラゴンとか」
なんてね、と肩を竦めた途端、ハルカは私の手を取り走り出す。もつれそうになった足を何とか動かし、目を白黒させながら「突然何!?」と叫ぶ。
「ほらみてあそこ、ドラゴンが現れた!」
ハルカが車道の反対側にある公園を指さす。恐竜の滑り台ひとつだけある質素な公園だった。
「ミク、石板だ。“この先、ドラゴンが生息する地帯。用心されたし”て書いてある」
公園の入り口に設置された案内板を指さしながらハルカは笑う。
英語で書かれたその案内板は、なんと書かれているのかは分からないけれど、きっと公園のルールについて書かれているのだろう。
────それでも。
私はハルカの手をぎゅっと握り返して、ハルカの隣に並んで走る。
「“勇者らの健闘を祈る”だってさ!」
そう言って声をあげて笑えば、ハルカもクスクスと笑いだす。
勇者の剣を掲げたハルカが「とつげーき!」と走り出す。ヤツデの葉っぱをひらひらさせながら、ハルカの背中を追っかけた。