イバラの森の塔は、今日も固く閉ざされている。

本当にごめんなさい、と心の中で深く謝罪して締められた鉄製の門をよじのぼり飛び越える。

身を低くして庭の木の、一番出窓に近い幹に手をかけた。


「っと、その前に」


その場に屈んで落ちていた石ころを二、三個拾ってポッケに詰めた。

木登りなんてしたことはないけれど、運動神経はそこそこいい方なので十分とかからず出窓の高さまでよじ登ることができた。

カーテンの向こうから柔らかいオレンジ色の光が漏れている。

間違いなくハルカはその向こうにいるはずだ。

ポッケに入れていた石ころを取り出して大きく振りかぶる。出窓に向かって放り投げた。窓枠に当たってコンッと弾ける。出窓はまだ開かない。

もう一度投げた。今度はガラスに当たってカンッと高い音がなる。

げっと肩をすくめた。窓はなんとか割れずに済んで息を吐く。

もういっちょ、狙いを定めて……。

大きく振りかぶったその時、窓の奥のカーテンが揺れて人影が映る。鍵が外れてガタガタと窓が開いた。風に煽られてカーテンが外へバサリと羽ばたく。

それを見逃さず両手で掴んだ。勢いをつけて木を蹴飛ばした。ターザンロープの要領でそのカーテンにぶら下がる。弧を描いた私の体はほぼ狙い通りに、出窓にたどり着く。


「ミク……!?」


勢いが良すぎたのかそのままハルカにダイブした。

二人して部屋のなかへ転がり込む。木の枝で腕を切り、着地で尻餅をついたせいで全身が痛い。