思ってもみなかった返事に、喉まで出かかっていた言葉がどこかへ行ってしまった。
代わりに出てきたのは「は?」という私の怪訝な声。
「うーん、でもお兄さんたちどこかへ行っちゃったしなぁ」
ふむ、とあごに手を当てて首を傾げた。
何を言ってるんだこいつは。
「この場合おれがカガイシャになるのか。だったらタイホされちゃう? どうしよう、おれ生まれて初めてパトカー乗る。それは、ちょっとドキドキする」
「ちょっ────と待て。色々とついていけないんだけど……。そもそも警察なんて呼んでないし。あんたを助けるためにああ言っただけだから」
今朝目が合ったのをカウントに入れるとしても、こいつとはほぼ初対面だ。なのに私は一体何を話しているんだろう。
「あれ、そうだったの? そっか。よかった安心した。おれタイホされないね。でも嘘はダメだな、嘘はいけないよ」
のほほんと笑ってそう言ったそいつに、無性にイラッとする。
「元はと言えばあんたを助けるためでしょうが。フツーそういうのわかるでしょ」
眉間に皺を寄せる。そいつは困ったように眉を下げて肩をすくめた。
何よその反応なんかムカつく。
「俺、フツーじゃないから」
「……は?」
「とにかく、嘘はダメです」