慌てて玄関の鍵を開けると、高木さんは「よかった、寝ちゃってたらどうしようかと思った」と朗らかに笑う。


「どうしたんですか? お母さんは今日残業だってさっきメッセージ来てましたけど……」

「うん、僕も聞いてね。ミクちゃん一人じゃ大変だろうから、晩御飯作りにきたんだ」


目を瞬かせながらそう尋ねると、高木さんは両手に提げていた買い物袋をガサリと持ち上げる。


「迷惑だったかな……?」

「あ、いや、迷惑ではないんですけど」


私がそう言い籠ると、高木さんは急に不安そうな顔をする。面と向かっては言いづらくて頬をかいた。


「その……お母さんが高木さんは壊滅的に料理ができないって言ってたから、そっちのが不安かも」


そう言うと、まるでたった今自分が料理ができないことを思い出したみたいな顔をして固まった高木さん。

数秒後他人事みたいに「どうしよう?」と青い顔で呟き、堪えきれずにぶっと吹き出した。


「高木さんはもうご飯食べましたか?」

「あ……いや。あわよくば一緒に食べて交流を深めようと……」


それって普通黙っておくことなんじゃないの?

まぁ言っちゃうところが高木さんらしいんだけど。
玄関ドアを大きく開いた。


「お母さんが遅い日、私が晩御飯作るんです。オムライスでもいいですか?」

「も、もちろん! 僕も手伝うね」

「台所の天井焦がしちゃうような人、うちの台所には立たせられません」