今日も窓は固く閉ざされている。
呪いをかけたれた王女さまが眠るイバラの森の塔みたいに。いくら見上げてもカーテンは開かず、待っている人も現れない。
肩を落として帰路に着く。今日もハルカには会えなかった。ハルカに会えずにもう一週間が過ぎた。
ハルカは本当は、ずっとずっと寂しかったんだ。
でもその気持ちに誰も気づいてあげられなかった。それがハルカをどんどん孤独にしてしまったんだ。
あの時ハルカに何を言っていれば、ハルカは笑ってくれたんだろうか。毎日そればっかり考える。
私がもっと大人で、言葉選びが上手だったらハルカは今も私と、自転車に乗ってあちこちを走り回ってくれていたんだろうか。
ベッドに寝転んで枕元に転がしていた小説を手に取った。ハルカが好きだと言ったお父さんの小説、私が主人公の物語。
顔の上に置いて深い息を吐いたその時、古ぼけたインターフォンが部屋中に鳴り響いた。
どうせ迷惑なセールスだろうと思ってのんびり小説のページをめくりながら確認しに向かうと、カメラに写っていたのは高木さんだった。