そんなことを考えながら店の裏にある駐輪場へ回ると、何やらもめている雰囲気の集団がいた。


「おいおい、これかなり痛ぇわ。肩外れたじゃねえか?」

「どうしてくれんだよ坊主」

「あー、これは肩外れてんな。慰謝料払えよ、ほら十万」


制服のシャツをズボンから出して耳にピアスを開けた、見るからにガラの悪そうな高校生3人組。

そいつらに誰かが絡まれているようだ。坊主と聞こえたので、どうやら絡まれているのは男らしい。

飛び火がかからないようさっさと自転車を引き出そうとしたその時。



「え、大丈夫ですか? 大変だ、お医者さんに見てもらわなきゃ」



少し高めの、でも優しく心地良い穏やかな声が聞こえて思わず足を止める。


「あァ? ふざけてんじゃねえぞっ」

「さっさと金出せ!」


声を荒立てて男たちがその“坊主”の胸倉をつかんだその瞬間、連中の間から顔がちらりと見えて目を丸くする。

その顔は数時間前にあの出窓に腰掛けていたのとまったく同じ顔だった。

助ける義理はない。でも、知らないふりをするのは目覚めが悪い。

もう、と小さく悪態をついて大声を上げた。


「お巡りさん、こっち! ゴロツキがカツアゲしてる!」


私の声に驚いたのか、高校生たちは舌打ちをして大慌てて逃げていく。

その背中が見えなくなったのを確認して、私は大股で近寄った。


「ちょっとあんた!」

「お巡りさんが来てるの? 困ったな、なんて説明しようか」