「出番だ! 行くぞ!」

 御者の声を聞くと同時に、護衛依頼を受けていたパーティーの面々が一斉に馬車の外に出て行く。

「よし、俺たちも行こう」
「待ちなさい」

 彼らに続いて幌を開け、馬車から降りようとする。しかしロザリーに止められた。

「どうして貴方が降りるの」
「聞こえただろ、魔物が出たんだよ」
「だからどうして貴方が行く必要があるのよ」
「魔物を倒すのは当然の――」
「忘れたの? 貴方とわたしは、ただのお客よ。わたしたちが外に出なくとも、彼らが勝手に片付けてくれるわ」

 指摘されて、確かにと考えを改める。
 この手の事態は久しぶりだったので、つい気持ちが高ぶってしまっていた。

「それに、ここでもし、わたしたちが加勢に行けば……彼らから恨まれるわよ」
「……ああ、そうだな」

 護衛依頼を受けていない冒険者、つまり俺たちに、獲物を横取りされてはたまらない。
 俺も長く冒険者生活をしている。だから彼らの背を追いかけて馬車の外に出るのは間違いだ。

「そう、それでいいのよ。わたしたちは乗車代を出さないと乗せてもらえないような冒険者なの。ここで大人しく彼らの活躍を低みの見物といきましょう」
「低みの見物か……」

 再び腰を下ろし、俺とロザリー……ソロのアタッカー二人は、馬車内で待つことにした。

 とはいえ、やはり気になる。
 すぐ傍で別のパーティーが魔物と戦っているのだから、気になって当然だ。
 馬車の小窓から、そっと外の様子を窺うことにした。

 護衛依頼を受けたパーティーは全部で五名いる。いつでも戦えるようにと、背を馬車に預けて陣形を整えている。

 一方、魔物の姿はというと……見た感じ、どこにもいない。

「……おかしい」
「何よ? 貴方まだ、外に出たいわけ?」
「違う、そうじゃない」

 違和感があった。
 馬車の外の状況を目にした俺は、胸騒ぎを覚える。

「――ッ、あいつら!」

 とここで、馬車から更に数名が外に飛び出した。
 王都から乗り継いでいた人たちだ。

「不味いぞ!」
「え?」

 再度、馬車の中で立ち上がる。
 小窓を閉めて、幌を開けて外に出ようとする。

「……っ」

 しかし、既に遅かった。
 護衛依頼を受けたパーティーの面々は、彼らに背後から襲い掛かられた。
 抵抗する間もなく、何が起こったのか訳も分からないうちに、地に伏すことになった……。