ノアがリンツ街を訪れたのは、一週間後のことだった。
 町の西側で待っていると、馬に跨るノアの姿が近づいてきた。予定通り、一人で来たらしい。

「やあ、久し振りだな。……いや、ついこの間、会ったばかりか?」
「だな」

 馬から降りるノアと挨拶を交わし、互いに苦笑する。

「いずれ再会するとは思っていたが、まさかこんなにも早くなるとは思わなかったよ」

 ノアはロザリーとレイ、そしてヒストルとも挨拶し、握手を交わす。

「銀級三つ星のノアがいると心強い。助かる」
「階級なんてただの飾りだ。気付いたときには勝手に上がっていた。それだけさ」

 つい先日、その階級が五年振りに上がって大喜びした男が目の前に居るわけだが、ノアには言わないでおこう。

「それで、町を案内してもらえるんだよな?」
「ああ、もちろんだ。……だがその前に、話し合いが先かもしれないが」

 そう返事をして、ヒストルの顔色を窺う。
 すると、ヒストルは首を横に振ってみせる。

「詳しい話は夜の食事のときにしよう。今は自由にしてくれて構わない」

 さすがはギルドマスター、気が利くな。
 俺たちのことをよく分かってくれている。

「ギルドマスターの許可は得たが、頼んでも構わないか?」
「任せてくれ。それじゃあ……まずは定番のギルドに案内するとしよう」

 リンツ街は、それほど大きな町ではない。案内もすぐに終わるはずだ。
 俺とロザリー、レイのブレイブ・リンツのメンバーは、ノアを連れて町中を歩き始めるのだった。