リンツ街に着いたあと、俺たちはギルドへと顔を出した。
 受付に立つイルリに、山賊の一味を討伐した旨を報告すると、深々と頭を下げられた。

「この度は本当にありがとうございました。当ギルドを代表して心より感謝申し上げます」
「じゃあ金を寄越すね、そして今日はパーッと打ち上げするね!」

 レイが軽口を叩くと、すかさずイルリがジト目をぶつける。
 けれどもレイは気付かない振りをして、鼻歌を口ずさんでいる。さすがは幼馴染の関係だ。

 気を取り直し、イルリが小さく咳払いを一つする。
 そしてロザリーと俺を相手に会話を続ける。

「モルサル街と王都との情報共有後にはなりますが、依頼達成の報酬とは別に、昇級となる見込みです」
「……昇級? いいのか?」

 その単語を耳にして、俺は思わず聞き返す。

「ギルド指定依頼を達成していただいたのですから当然です。……それに、先日のは勘違いでしたが、それでも数日中には昇級のお話をする予定でしたので」

 元々、ギルドでは昇級の話が出ていたのか。

 イルリの説明によると、山賊討伐の依頼が無事に達成と見なされた場合、ブレイブ・リンツのメンバー全員が、一段階分の昇級が確定となるらしい。
 レイは鉄級一つ星から二つ星に昇級し、ロザリーは鉄級二つ星から三つ星に、そして俺は銅級一つ星から……。

「二つ星になるのか……」

 昇級。それは冒険の目的の一つ。
 ここに来て星が一つ増えることになるとは思いもしなかった。

「いや、まだ昇級するか分からないから、喜ぶのは早いか」
「疑い深いのね」
「そうね! もっと喜ぶね!」

 二人が声をかけてくる。
 だが、俺は苦笑いするしかない。

「五年以上、銅級一つ星から変わっていないからな……疑いたくもなるさ」

 とはいえ、期待していないと言えば、嘘になる。
 俺だって冒険者の端くれだ。昇級できるとなれば心躍るし期待もする。
 確定するまでは、モヤモヤしたまま過ごすことになるだろう。

「リジン。たとえ昇級してもしなくても、貴方が貴方であることに変わりはないわ。もちろん、私も。そしてレイも」
「そーいうことね!」
「……だな。俺は良い仲間に恵まれたよ」

 肩を竦め、口元を緩める。
 そして俺たちは互いに笑い合った。