この日、俺たちは五体の二角兎を討伐することができた。
 本来、二角兎は見つけるのが難しい魔物だ。しかしロザリーは魔物の生息地での探索方法を熟知している。そのおかげで、遭遇した二角兎を一体も逃がすことなく倒せたのだ。

 そして今回分かったことが一つ。

「あの魔法は反則だな」
「反則って何よ、失礼ね」
「使い勝手が良すぎるって意味だよ」

 空気を圧縮させて飛ばす風魔法が便利すぎた。
 威力自体は大したことはないのだが、二角兎を気絶させることはできるので、見つけることさえできれば、あとは百発百中で討伐することができる。

 更に、二角兎の討伐を続ける中で、別の魔物――山牙蛇にも遭遇し、倒すことに成功している。これは山に潜む蛇の一種で、大きな牙が特徴だ。足元の木の葉や樹上に隠れ、獲物が近づくのを待つ習性があるので、油断していると痛い目を見ることになる。

 だが、ロザリーは全く動じなかった。
 山牙蛇の気配に気付くと、二角兎のときと同様に空気の塊を放ち、当然のように気絶させる。負けずと俺も別の個体を倒してみせたが、ロザリーには驚かされてばかりの一日だった。

「……さて、日も暮れたことだから、そろそろ引き揚げるか」
「そうね。私も満足できたし構わないわ」

 それは何よりだ。
 パーティーを組んで行動する以上、自分や仲間の精神状態は重要になる。
 機嫌が悪かったり落ち込んだりしたままだと、戦闘に影響が出るからな。

「結構な額になりそうだな」
「期待し過ぎは毒よ」

 しっかりとロザリーに突っ込まれた。
 とはいえ、期待するのも仕方がないことだ。

 ブレイブ・リンツでの初陣戦は、無事に終えることができたし、初日の戦果も上々で……否、この量ならば上出来と言えるだろう。

 パンパンに膨れ上がった回収袋を肩から斜めに掛けると、ロザリーと俺は来た道を戻って山を下りる。そして再びリンツ街に歩を進めるのだった。