パーティー結成の翌朝。
 ギルドロビーのソファに腰掛け、俺はパーティーの仲間が来るのを待つ。それはもちろん、ロザリーのことだ。

 モルサル街でパーティーをクビになったときは、再びパーティーを組むことはないだろうと思っていた。それもまさか、アタッカー二人で……。

 他の冒険者からすれば、気でも狂ったのかと思うだろう。
 タンクもヒーラーも居ないのだから当然だ。

 でも、俺はロザリーの誘いに乗った。

「お待たせ」

 後ろから声をかけられる。
 ソファに座ったままで振り返ると、ロザリーが立っていた。

「おはよう。昨日はよく眠れたか」
「まあまあね。貴方は?」
「んー、どうだろな」
「何よそれ」
「気にするな」

 昨日は興奮してあまり寝付けなかった。
 しかしそれを話すとロザリーの小言を聞く羽目になりそうだったので止めた。

「よし、まずは朝食を取って……それから掲示板を見に行くか」
「ダメよ。そんな悠長にしていたら、良い依頼が無くなってしまうわ。今すぐ見に行きましょう」

 ご飯を食べる前に見に行くって、随分と忙しないな。
 そんなにやる気に満ちているようには見えないが、表情には出さないだけでロザリーも興奮しているのだろうか。

「いや、昨日見た感じだと、そんなに良い依頼は無かったと思うが……」
「いいから行くの。ついて来なさい」

 有無を言わさぬ態度に、俺はソファから腰を上げた。
 ロザリーに連れられて依頼掲示板の前へと移動する。そして気付いた。

「そう言えば俺たち、もう……ソロじゃなかったな」

 依頼書を見て、改めて実感する。
 俺たちはソロじゃない。つまり、パーティー前提の依頼を受注することができる。

 アタッカー二人だけのでこぼこ……否、でこでこパーティーではあるが、ソロではないので、パーティー前提の依頼を引き受けても問題あるまい。

 これは選択の幅が広がる。
 ロザリーとパーティーを組んで正解だった。

「……で、どれを受けるんだ」

 俺の真横に並び立ち、例の如くしかめっ面を浮かべるロザリーに問いかける。すると、

「これにしましょう」

 お目当ての依頼が見つかったようだ。
 ロザリーは掲示板から依頼書を手に取り、それを俺に手渡す。

「これは……」

 そして俺は、思わず顔が引きつった。

「嫌なの?」
「……そういうわけじゃない」
「だったら、決まりね」

 ロザリーが選んだのは、二角兎の討伐依頼だった。
 この魔物が直接の原因となり、俺はモルサル街を追い出されたわけだが……。

 恐らく、ロザリーは気にかけてくれたのだろう。
 嫌な思い出を払拭するには、絶好の機会かもしれない。

 だから頷く。
 ソロではなくなった今の俺に、迷いはない。

「ブレイブ・リンツの初陣戦は、二角兎の討伐依頼で決まりだ」