ロザリーと顔を合わせたまま、二人して沈黙する。
 と、よく見てみると、仄かにロザリーの頬が赤くなっている。

「……く、組んでみない? の間違いよ」

 勢いが良すぎたのだろう。
 ロザリーは視線を逸らして言い直した。

「ロザリーと俺が、パーティーを組むのか……」

 イルリに言われてはいたが、冗談のような話だと考えていた。
 それが今、目の前に現実の話として上がっている。

「理由を聞いてもいいか?」

 とりあえず、ロザリーの意見を聞いてみることにしよう。
 と思って理由を訊ねてみたのだが……。

「理由? そんなの必要?」

 目を逸らしたまま、ロザリーは眉を潜めて反応する。

「ロザリー、お前と俺はどちらもアタッカーだ。片方がヒーラーやタンクで、他にも仲間が居るならともかく、アタッカー二人だけのパーティーで不安にならないのかと思ってな」
「もしそうなら、私は貴方を誘ったりはしないわ」

 再び視線を戻したロザリーは、自分が思っていることを言葉にして俺へと伝える。

「これまでずっとアタッカーとして生きてきたんでしょう? だったら、これから先もアタッカーとして思う存分に生きていきなさい。ヒーラーが居ない? タンクが必要? だから何だって言うのよ。タンクが居ないなら、反撃する隙を与えなければいいじゃない。ヒーラーが居ないなら、傷を負わなければいいだけの話よ。私が言っていること、間違っているかしら?」

 ロザリーは息を荒げている。
 それはもう、力説と言うに相応しい語りだった。

「いや、そうだな。確かにロザリーの言う通りだ」

 その台詞には、ロザリーの想いがこれでもかと込められていたに違いない。
 だから俺も、その想いに対して自分の考えを伝えなければならない。

 今までは、パーティーの仲間の役割に拘っていた。
 タンクとヒーラーは必要不可欠な存在だと思い込んでいた。
 戦闘を有利に進めるために、バフやデバフを担当するサポーターを加えるべきだと信じ込んでいた。

 でも、そうじゃない。
 たとえどんなパーティーを組んだとしても、結局行き着く先は同じなのだ。

 敵を倒す。
 ただそれだけだ。

 つまりは、アタッカーだけでも決して不可能ではないということになる。

「……やってみるか」

 気付けば、声にしていた。
 そしてそれを聞いたロザリーは口の端を上げる。

「言ったわね? もう、後悔しても遅いから」
「しないさ」

 後悔と言われて、俺は首を横に振る。

「俺は……いや、俺たちは、既にどん底に居るんだ。これ以上は下がり様がない……違うか?」
「ふん、安心しなさい。私が一緒に居るからには、上がり続けることしかできないわ」
「言うじゃないか」
「当然よ。だって目指す先は金級冒険者でしょう?」

 そう言って、ロザリーが手を差し出してくる。
 俺の夢を口に出し、もう一度挑戦しようと言ってくれているのだろう。

 だとすれば、その手を握らないわけにはいかないな。

「交渉成立だな」

 俺はロザリーの手を取り、しっかりと握手を交わすのだった。