嘘の護衛依頼を受けた冒険者パーティーの死体から、冒険者証を回収していく。
 俺たちは山賊ではないので、彼らの所持品を荒らすようなことはしない。
 だが、これだけは話が別だ。

 冒険者が死したとき、それを知らせるために必要なもの。
 それが冒険者証だ。

 冒険者証には、持ち主の名前と階級が記されている。
 これを持ち帰り、ギルドに提出することで、死の証明となる。

「せめて、安らかな眠りを……」

 たとえ、地面に埋めたとしても、夜が来れば魔物に掘り返されてしまうだろう。
 故に、手を合わせるだけに留めた。

「……祈りは終わったかしら」
「ああ。それじゃあそろそろ出発する――」

 言おうとした瞬間、ロザリーが再び火炎魔法を解き放つ。
 標的は――冒険者パーティーの亡骸だ。

「何を……」

 言いかけて、止めた。
 火葬していることに気付いたからだ。

 これならば、彼らが魔物に食い散らかされることもない。
 ロザリーなりに考えての行動なのだろう。そしてそれは間違いなく正しい行動だ。

「さあ、行きましょう」
「……ああ、感謝する」
「貴方に感謝されても困るだけだから」
「一冒険者として言いたくなったんだ」
「……そう」

 それから暫くして、俺たちはリンツ街へと向けて歩を進めるのだった。