命の重さに気づいたのは、懲役刑の判決が出てから数年が経った頃。
 それに悩まされるようになって、眠れなくなって、夢に彼らが出るようになった。
 お前のせいだと、恨まれている。
 仕方のないことだった。
 贖い続けること以外にできることはなかった。
 だけど、ほっとしている自分もいた。
 全てが終わってくれたらいいと思っていたから、面倒が消えて、警察に言われるように動き続けて刑期を全うした。
 刑が終えて、警察にはもう二度とくるなよと伝えられた。
 どうしてこんな悪魔に優しさのある言葉をかけられるのだろう。
 人殺しに人権など不要ではなかろうか。
 しかし、助けられた。
 大人が僕を助けた。
 もしも、学生の頃、大人を頼れたなら変わっていただろうか。
 今更遅い。
 もう三十手前の歳だ。
 刑を受けている頃に警察に言われた言葉がある。
『バイトでもいい。就職でもいい。大学に通うでもいい。ちゃんと生きていきなさい。もうあなたを苦しめるものはいない』
 深みのある言葉だった。
 まずは探すことから始めようと思う。
 いじめのない環境、仕事のできる環境、やめたくなったらやめればいい。
 いつだって逃げ出せる。逃げていい。
 逃げちゃいけない理由はない。
 だから、まず一歩踏み出してみる。
 大学に通うためのお金を貯めるため、深夜バイトを始めることにした。
 いつか尊敬した彼女の接客を真似てみる。
 慣れ始めたコンビニの深夜バイト。
 時たまにくる客に向けて。
「いらっしゃいませ」

 彼らに贖い続けながら、生きていく。