――それは、入学したばかりのころだった。

図書委員になって、図書館の担当になったとき。
図書室の場所がわからなくてうろうろしていたら、たまたま担当の日が同じだった先輩と出会った。

「1年?どうしたの?」

「あ、えっと…図書当番、なんですけど…場所、わかんなくてっ…」

背が私よりもずっと高くて、怖くて目を見れなかった。
しどろもどろに答えると、先輩はあの笑顔で言った。

「あー、そうなの?俺も今日だよ。一緒に行こっか、ついてきて!」

「え、あ、ありがとうございます…!」

そのまま先輩に連れられて、一緒に図書当番をした。

「まじでうちの学校って図書室生徒来ないよね」

ふいに先輩が話しかけてきた。

「そ、そうですねっ…」

もともと人見知りで、なおかつ一緒にいるのは先輩、異性。
心臓がバクバクしている。

「あ、そういえば君、名前なんていうの?」

「え?」

思わず先輩を見上げる。
すると、目が合った。
澄んだ目。焼けた肌に真っ白い歯。

かっこいい…

って、何考えてんだ!
名前、名前言わなきゃっ!!

「あ、わ、たしっ…1年、4組の、杉山(すぎやま)美織です…」

「ふふ、そんな怖がんないでよ。」

「え、いや、ちがっ…」

「俺は、2年1組、桜木斗真(とうま)です。よろしくね」

にこっ、と微笑む先輩は、とてもかっこよくて。
――私は、いとも簡単に恋に落ちた。