今日の事を知られるわけにはいかない。

何とか顔に出ないように、隠し通さないと……。

いつかタイミングをみて話すべきではあるけれど、私自身も混乱している今、燈真君に話せるわけがない。

その時、リビングの隣にある部屋へと続くドアがカチャッと開いた。

きちんと閉まっていなかったのか、空調の風で開いてしまったらしい。

電気がつけっぱなしになっていて、その部屋の中は明るかった。

見てはいけないと思いつつも、何かに惹かれるようにして私はその部屋へと踏み込む。

机とパソコンが置いてあり、コルクボードには私の写真とその横に何かをメモった物が貼られていた。

何だろうと思い、そのメモに近づく。


「……えっ?」


メモの文章を目で追った私は、背筋が凍り付いた。

コルクボードに貼られていたのはそれだけではない。

七海からのメッセージをプリントアウトした物が貼りつけられていた。



ごめん、もう無理。

婚約者が私の親友と浮気してた。

そっちと結婚するつもりだから私とは結婚できないって。

そもそも出会った時から私ではなく、親友の方が好きだったって言われた。

今まで、あんなに幸せだと思っていたのは私だけ。

二人は私を裏切って影で笑ってたんだ。

じゃあ、何で私と付き合ったの?

何で私にプロポーズしたの?

親友も結婚報告した時に何で、『おめでとう』って笑顔で言ったの?

私、もう何も信じられないよ。


ずっと仲の良い友だちとして続いていくものだとばかり思っていたのに。

仕事も婚約者も、全てを親友に奪われた。


どこで間違えた?

何を間違えた?

親友って何?


生きる希望なんて何もない。

明るい未来なんて、見えるはずがない。



さようなら