七海の葬儀の時に編集長の田辺さんから頂いた名刺と同じデザインの物だった。
名刺を見て、ハッとなる。
瞳の所属している部署は田辺さんや七海と同じ女性誌を扱う編集部だった。
「あ、柚乃先輩、連絡先交換しましょうよ。名刺に書いてある連絡先は社用の物なんで」
「えっ?……あ、そうだね」
「んじゃ、QRコードを読み取ってくださいね」
ニコニコ笑顔で瞳はQRコードをスマホの画面に表示させて私に向ける。
名刺を一旦置いて、私は自分のスマホを取り出すとカメラを起動させて、瞳のスマホの画面のQRコードを読み取った。
さっきまであった、和やかな気持ちが一気に吹き飛んで、今は変な焦燥感しかない。
瞳なら何があったのか話してくれるかもしれない。
ただ、七海の後輩だろうから、知らない事もたくさんあるだろうけれど。
「あ、柚乃先輩のお仕事は何ですか?」
「……あ、うん。ごめんね、これ……」
瞳に名刺をもらったので、私も名刺を彼女に渡す。
「ええっ?!めっちゃライバルじゃないですかー!」
「だから、ごめんねって言ったじゃん」
名刺を見た瞳が驚きの声をあげたので、私は苦笑しながら答える。
本当は笑顔で話している余裕なんてないに等しかった。
だけど久しぶりに会った後輩と楽しく話しているのに、急にテンション下がったと思われたら、聞ける情報も聞けなくなってしまう。
背中を変な汗が伝う。
心臓の鼓動もかなり速くなり、落ち着かせるように私はひと口アイスココアを飲んだ。
「ファッション誌担当してるんですね。だから柚乃先輩、垢抜けたんだ。元々、美人だったけど、更に磨きがかかってめちゃめちゃ仕事のできるカッコいい女って感じでうらやましいです」
「ハハッ。そう言ってくれると嬉しいんだけど、失敗ばかりして迷惑かけまくってるし、私なんかまだまだなんだよね……」
「そんな事ないですよー。うちの部署にいた先輩と比べたら、柚乃先輩の失敗なんて可愛い物ですって」
アルコールも入っていないのに、瞳は楽しくなると饒舌になる。
本人は自覚していないのだろうけれど、割と瞳のひと言で空気が変わる事もあって、一部から嫌煙されていた。
社会人になってもその癖は直っていないようだ。
自覚していないのだから、当たり前か。
「失敗と言えば、ちょっと、聞いてくださいよ。最新号の企画会議の時にひと騒動あったんですよ。もうね、後輩の私でさえ信じられない事があったんです」
瞳は興奮気味にそう切り出した。
名刺を見て、ハッとなる。
瞳の所属している部署は田辺さんや七海と同じ女性誌を扱う編集部だった。
「あ、柚乃先輩、連絡先交換しましょうよ。名刺に書いてある連絡先は社用の物なんで」
「えっ?……あ、そうだね」
「んじゃ、QRコードを読み取ってくださいね」
ニコニコ笑顔で瞳はQRコードをスマホの画面に表示させて私に向ける。
名刺を一旦置いて、私は自分のスマホを取り出すとカメラを起動させて、瞳のスマホの画面のQRコードを読み取った。
さっきまであった、和やかな気持ちが一気に吹き飛んで、今は変な焦燥感しかない。
瞳なら何があったのか話してくれるかもしれない。
ただ、七海の後輩だろうから、知らない事もたくさんあるだろうけれど。
「あ、柚乃先輩のお仕事は何ですか?」
「……あ、うん。ごめんね、これ……」
瞳に名刺をもらったので、私も名刺を彼女に渡す。
「ええっ?!めっちゃライバルじゃないですかー!」
「だから、ごめんねって言ったじゃん」
名刺を見た瞳が驚きの声をあげたので、私は苦笑しながら答える。
本当は笑顔で話している余裕なんてないに等しかった。
だけど久しぶりに会った後輩と楽しく話しているのに、急にテンション下がったと思われたら、聞ける情報も聞けなくなってしまう。
背中を変な汗が伝う。
心臓の鼓動もかなり速くなり、落ち着かせるように私はひと口アイスココアを飲んだ。
「ファッション誌担当してるんですね。だから柚乃先輩、垢抜けたんだ。元々、美人だったけど、更に磨きがかかってめちゃめちゃ仕事のできるカッコいい女って感じでうらやましいです」
「ハハッ。そう言ってくれると嬉しいんだけど、失敗ばかりして迷惑かけまくってるし、私なんかまだまだなんだよね……」
「そんな事ないですよー。うちの部署にいた先輩と比べたら、柚乃先輩の失敗なんて可愛い物ですって」
アルコールも入っていないのに、瞳は楽しくなると饒舌になる。
本人は自覚していないのだろうけれど、割と瞳のひと言で空気が変わる事もあって、一部から嫌煙されていた。
社会人になってもその癖は直っていないようだ。
自覚していないのだから、当たり前か。
「失敗と言えば、ちょっと、聞いてくださいよ。最新号の企画会議の時にひと騒動あったんですよ。もうね、後輩の私でさえ信じられない事があったんです」
瞳は興奮気味にそう切り出した。