ここは魔法都市アストラルを中心とする、浮遊島で構成される世界。ポンヌは辺境の島のひとつである。そしてポンヌ孤児院では、マザーたちの保護のもとで孤児たちが共同生活を営んでいる。多くは親を戦争で亡くした者だ。

 十数年にわたる長き戦争の理由は、貴重な鉱石資源である秘石、ギムレットの奪い合いである。

 ギムレットは魔法のエネルギーを内包しているために利用価値が高い。島間を往来する飛行艇の原動力、照明や戦闘兵器、それに汎用魔法の発動源としても。

 そして5年ほど前、地上の大陸に踏み込んだギムレット発掘隊が恐るべきものを発見した。――それが最高純度の秘石、『クイーン・オブ・ギムレット』。

 魔法研究者の間では、最高純度の石は生命を操ることすら可能と考えられていた。誰も成し得たことのない、不老不死の魔法を実現できる可能性のある動力源だと。だからこそ、世界の強者はこぞって『クイーン・オブ・ギムレット』を追い求めた。

 だが秘石は搬送中に忽然と姿を消し、その行方は誰も知ることがなかった――。