あれから、数時間後……。
宿の部屋でマハトが休んでいると、扉に何かがぶつかったような物音がしたので、開いてみるとそこにはフラフラのクロスが立っていた。
「マハしゃんゴメ~。身許、わきゃらなきゃったよぉ~」
「うわ。クロスさん、大丈夫か?」
「でぇじょぉぶ。ちょと…ホントにちょとだけ…ね。飲み過ぎちゃっ…てぇ」
情報を得るために、やってきた冒険者や商人に酒を奢ってまわったら、気を良くした商人に返盃された。
マハトに言った通り、酒は決して嫌いではないが、特に強くもない。
結果、引っ込み思案のクロスは、グイグイくる商人からの返盃を断れず、量を過ごしてしまった。
「子供を探している人はいなかったのか?」
「とりあえずぅ〜、子連れのチャラバンなんて、ここ最近は見たことにゃいってぇ……」
マハトに、なんとか仕入れた情報を伝えようと、呂律が回らず噛みまくりながらも、クロスは仕入れた情報を伝えた。
この辺りは、非常に濃い魔素が滞っていて、不毛の砂漠となっていること。
そのため、普通の砂漠以上に通過が困難で、しっかりと前準備をせずに横断しようとすれば、魔障しかねないこと。
当たり前のことながら、途中に補給ポイントは一切なく、あるのは廃墟と化した遺跡だけであること。
この町は砂漠を渡るための、最後の補給ポイントであり、向こうから来た者たちの最初のオアシスであること。
最近、町の近くでサンドウォームの目撃情報があり、砂漠を渡る者に注意の勧告がされていること…などだった。
「しょもしょも、しゃばくを子連れで渡るなんて、しょーきの沙汰じゃにゃいって話らった……よ…」
そこまで話したところで、クロスはベッドにばったりと倒れ込む。
「酒は毒だと教えられたが、あながち嘘でも無いのかもな…」
マハトはクロスに毛布を掛けてやりながら、呟いた。