「まさか。単なる趣味です。僕はただの大学生ですよ」
「そうですか。どんな学科の生徒さんなんですか?」
「英語英文学科の二年生です」
「英語なんてカッコいいですね」
 女が僕のありふれた学科にさえ感心してくれるので、僕はますます恥ずかしくなった。女は何か考えたようで少し間を置いてから問いを発した。
「じゃあ、年齢は二十くらいですか?」
「はい、二十です」
 言った後、僕は少し躊躇したが思い切って相手の年齢を聞いてみることにした。
「あの、本来なら女性に年齢を尋ねるのは失礼だと思っています。でも、僕にはあなたの姿が見えないので口の聞き方に少し困っています。あなたは何歳ですか?」
「あ、えーと。その、私は」
 女がすぐに答えなかったのは単に恥ずかしかったからと言うだけではないような気がした。
 それはさておき、僕はまだ自分たち二人が相手の名前さえ聞いていないことに気づいた。僕は先に自分の名前を名乗ることにした。
「すみません。順番が違っていました。まだ、お互いの名前も知りませんでしたね。僕の名前は山崎純、純は純粋の純です」