見た目が良い分、得してきたことはたくさんある。
今みたいになんとなくでふわふわ流されて生きて来られたこと。彼女には困らなかったこと。

たまたま頭も良くて、そこそこ勉強できたから、この進学率の高い高校に進学できたこと。

歴代彼女たちに「かっこいい、優しい」から付き合ってほしいと言われたこと。

でも代わりに「私のこと、好きじゃないでしょ」と言われるまでの流れを繰り返し続けていること。

俺には多分【中身】がない。
何をしてもなんとなくで、その場の空気感で選んで来た人生だと自覚している。

優しいというか、どうでもいい。どっちでも良いから相手に合わせているだけ。相手が欲しい言葉をあげるだけで話が流れ始める。

付き合いたいなら付き合ってあげる。別れたいなら別れてあげる。

相手の目を見れば、俺にどうして欲しいのかなんとなく分かる。
キスしてほしい、愛を囁いてほしい。振ってほしい。慰めてほしい。
目は、口ほどに物を言う。
俺の目を見て、俺の中身がないことに気がつく頃には別れ話になっている。

それで相手が幸せなら、良いんじゃないか?と思いながらも気がつけば責任が伴う事は自分では決められなくなっていた。

小論文模試の後に配られた進路希望調査表を眺めながら、
自分には何ができるのか。何が好きで嫌いで、将来の夢とか考えてみる。

無邪気にサッカー選手とか書いてみた。
中学生の時に諦めた夢をまた掘り返すほど、何も俺にはなかった。

あのスカウトの人だって、俺の顔を見て、スカウトしてきた。外身で受かったとしても、中身がなければあんな厳しい世界、生きていけない。

一時的に売り出されたアイドルが、30超えてテレビに出ているかと言われれば極一部だ。

アイドル戦国時代と言われる世の中で、俺は、アイドルとして生きているイメージができなかった。