〜親友との再会〜
それから数週間後。
相変わらず、新しい友達はできていないけれど、大学生活には慣れてきた。
今日は一コマ目に講義が入っていない為、少し遅めに家を出た。
大学の中央には広場がある。
そこで、お兄ちゃんの姿を見つけた。
「誰か一緒に居る?」
お兄ちゃんは、女子学生と話をしていた。
珍しいな。
女子と二人っきりで居るのは。
相手の女子学生の後ろ姿は、どこか見覚えがあった。
「碧先輩、お久しぶりです」
「君は確か……柚葉ちゃん?」
「……」
「どうかした?」
「いえ! 覚えててくれて嬉しいです。これから、何か分からないことがあれば聞きに行っても良いですか?」
「あぁ、構わないよ。そういえば、陽菜もこの大学に通ってるんだよ」
「……陽菜ちゃんが?」
「そろそろ大学に来る頃だと思うんだけど……あ! 居たいた!」
あ……バレた。
それよりあの子は確か……。
「……柚葉?」
お兄ちゃんと話している子は、確かに見覚えがあった。
彼女の名前は月島柚葉。
私と彼女は幼馴染で、中学まではよく一緒に遊んでいた。
しかし、別々の高校に通うことになり、しばらく疎遠になっていたのだ。
こうして再会できたことが嬉しかった。
「久しぶり。元気だった?」
「ひっ……陽菜ちゃん?」
何故か柚葉は驚いた表情をしている。
「どうしたの?」
「いや、陽菜ちゃん凄い美人さんになって驚いたの。昔から可愛かったけど、より磨きがかかったって言うか……」
「えっと……無理して言ってない?」
たどたどしい話し方に、少し違和感を覚える。
「いやいや! ほんとのことだから。久しぶり過ぎて、少し緊張してるのかも」
その割には、お兄ちゃんには普通に話してたけど。
まぁ、お兄ちゃんは私と違ってフレンドリーだからな。
話しやすいのかもしれない。
「久しぶりに会ったんだから、もう少し話してたらどうだ? 講義まで時間があるし、遅れなきゃ大丈夫だよ」
お兄ちゃんが気を利かせて、私と柚葉を二人きりにしてくれた。
……柚葉、まだ緊張してるのかな?
私も話すのは苦手なんだけど……。
それでも、せっかくの再会なのだから、何とか話題を振り絞った。
「そう言えば、柚葉ってお兄ちゃんのこと好きじゃなかったっけ? 」
「えっ……!」
口から出た言葉は、そんな突拍子もないことだった。
「あっ……。急に変な質問だったね」
「いや、碧先輩は私の初恋の人だよ。でも、さっき再会したら好き! って気持ちは感じなかったな。まぁ、あれから三年以上も会ってなかったもんね」
そっか……。
たった三年と言うべきか、三年もと言うべきか。
とにかく、こうして再会できたことが嬉しかった。
当時の楽しい思い出が、一斉に蘇る。
「でもなんか、碧先輩変わったね」
「そうかな? 私には分からないけど」
「まぁ、ずっと一緒に居ればそんなもんか」
だいぶ、昔のように会話ができるようになってきた。
「……あ、そういえば。陽菜ちゃんのお家のこと、ニュースで観たよ。その……私自身も、凄く悲しかった」
柚葉は良く家に遊びに来ていたもんね。
私たち家族は、柚葉にとっても家族同然の人たちだった。
「莉子ちゃんと遊んだり、美咲さんの手料理を食べたりしたよね。あぁ、達也さんから医学の話をされたこともあったっけ。あの時は難しくて、良く理解できなかったな」
柚葉、理解できてなかったんだ。
私と違って熱心に聞いていたから、てっきり意味が分かっているものだと思っていた。
「もしかして、柚葉の学部って医学部?」
「そうだよ。だからさっき、碧先輩にも挨拶をしていたの」
「そうなんだ。医学に興味あるのかなとは思ってたけど……」
「実は、二年前に母が病気で死んじゃったんだよね。何もできなかった自分が嫌で……。そこから医者を目指すようになったんだよね」
「え! お母さん、亡くなってたの……?」
「報告できなくてごめんね。あの時はだいぶショックが大きかったから……」
そうだったんだ。
でも、何も言われなかったのは少し悲しいな。
「だからさ、陽菜ちゃんの家族が亡くなったって話を聞いた時も凄く悲しかった。特に達也さんは、医学に興味を持つきっかけをくれた人だったし、講義を受けるの楽しみにしてたの」
御影教授の言う、お父さんに憧れている学生って柚葉のことだったんだ。
「火事のことは、事件の可能性が高いみたい。決定的な証拠も見つかってないし、動機とかもまだ分からないけど……」
その時、柚葉が暗い表情に変わった。
「私にそんなに詳しく言ってもいいの? だって私は……」
急にどうしたのだろう。
これはテレビでも報道されて、柚葉も知っているはずなのに。
でも、そんなことは聞けなかった。
せっかく再会できたのだから、気まずくなるのだけは避けたかったから。
それから数週間後。
相変わらず、新しい友達はできていないけれど、大学生活には慣れてきた。
今日は一コマ目に講義が入っていない為、少し遅めに家を出た。
大学の中央には広場がある。
そこで、お兄ちゃんの姿を見つけた。
「誰か一緒に居る?」
お兄ちゃんは、女子学生と話をしていた。
珍しいな。
女子と二人っきりで居るのは。
相手の女子学生の後ろ姿は、どこか見覚えがあった。
「碧先輩、お久しぶりです」
「君は確か……柚葉ちゃん?」
「……」
「どうかした?」
「いえ! 覚えててくれて嬉しいです。これから、何か分からないことがあれば聞きに行っても良いですか?」
「あぁ、構わないよ。そういえば、陽菜もこの大学に通ってるんだよ」
「……陽菜ちゃんが?」
「そろそろ大学に来る頃だと思うんだけど……あ! 居たいた!」
あ……バレた。
それよりあの子は確か……。
「……柚葉?」
お兄ちゃんと話している子は、確かに見覚えがあった。
彼女の名前は月島柚葉。
私と彼女は幼馴染で、中学まではよく一緒に遊んでいた。
しかし、別々の高校に通うことになり、しばらく疎遠になっていたのだ。
こうして再会できたことが嬉しかった。
「久しぶり。元気だった?」
「ひっ……陽菜ちゃん?」
何故か柚葉は驚いた表情をしている。
「どうしたの?」
「いや、陽菜ちゃん凄い美人さんになって驚いたの。昔から可愛かったけど、より磨きがかかったって言うか……」
「えっと……無理して言ってない?」
たどたどしい話し方に、少し違和感を覚える。
「いやいや! ほんとのことだから。久しぶり過ぎて、少し緊張してるのかも」
その割には、お兄ちゃんには普通に話してたけど。
まぁ、お兄ちゃんは私と違ってフレンドリーだからな。
話しやすいのかもしれない。
「久しぶりに会ったんだから、もう少し話してたらどうだ? 講義まで時間があるし、遅れなきゃ大丈夫だよ」
お兄ちゃんが気を利かせて、私と柚葉を二人きりにしてくれた。
……柚葉、まだ緊張してるのかな?
私も話すのは苦手なんだけど……。
それでも、せっかくの再会なのだから、何とか話題を振り絞った。
「そう言えば、柚葉ってお兄ちゃんのこと好きじゃなかったっけ? 」
「えっ……!」
口から出た言葉は、そんな突拍子もないことだった。
「あっ……。急に変な質問だったね」
「いや、碧先輩は私の初恋の人だよ。でも、さっき再会したら好き! って気持ちは感じなかったな。まぁ、あれから三年以上も会ってなかったもんね」
そっか……。
たった三年と言うべきか、三年もと言うべきか。
とにかく、こうして再会できたことが嬉しかった。
当時の楽しい思い出が、一斉に蘇る。
「でもなんか、碧先輩変わったね」
「そうかな? 私には分からないけど」
「まぁ、ずっと一緒に居ればそんなもんか」
だいぶ、昔のように会話ができるようになってきた。
「……あ、そういえば。陽菜ちゃんのお家のこと、ニュースで観たよ。その……私自身も、凄く悲しかった」
柚葉は良く家に遊びに来ていたもんね。
私たち家族は、柚葉にとっても家族同然の人たちだった。
「莉子ちゃんと遊んだり、美咲さんの手料理を食べたりしたよね。あぁ、達也さんから医学の話をされたこともあったっけ。あの時は難しくて、良く理解できなかったな」
柚葉、理解できてなかったんだ。
私と違って熱心に聞いていたから、てっきり意味が分かっているものだと思っていた。
「もしかして、柚葉の学部って医学部?」
「そうだよ。だからさっき、碧先輩にも挨拶をしていたの」
「そうなんだ。医学に興味あるのかなとは思ってたけど……」
「実は、二年前に母が病気で死んじゃったんだよね。何もできなかった自分が嫌で……。そこから医者を目指すようになったんだよね」
「え! お母さん、亡くなってたの……?」
「報告できなくてごめんね。あの時はだいぶショックが大きかったから……」
そうだったんだ。
でも、何も言われなかったのは少し悲しいな。
「だからさ、陽菜ちゃんの家族が亡くなったって話を聞いた時も凄く悲しかった。特に達也さんは、医学に興味を持つきっかけをくれた人だったし、講義を受けるの楽しみにしてたの」
御影教授の言う、お父さんに憧れている学生って柚葉のことだったんだ。
「火事のことは、事件の可能性が高いみたい。決定的な証拠も見つかってないし、動機とかもまだ分からないけど……」
その時、柚葉が暗い表情に変わった。
「私にそんなに詳しく言ってもいいの? だって私は……」
急にどうしたのだろう。
これはテレビでも報道されて、柚葉も知っているはずなのに。
でも、そんなことは聞けなかった。
せっかく再会できたのだから、気まずくなるのだけは避けたかったから。