え~っと、何と言えば良いのか。きっと何かの陰謀に巻き込まれたんです。そうに違いありません。
私は今、どこかわからない山の中に居ます。なぜこんな所に居るのかは、裕子ちゃんか美夏ちゃんに聞いてください。それか、サバイバルの妖精さんに聞いてくれても良いです。
お話が通じれば! ですけどね!
それは、一昨日の事でした。
私の部屋で何だか光ってるパソコンを使って、FPSって言うんですか? そのシューティングゲームで、裕子ちゃんと美夏ちゃんが遊んでいました。
何で私の部屋でっていうのは、今更なので置いといて。何でそんな高そうなパソコンを二台も持ってるのなんて事も、裕子ちゃんの事なので置いときましょう。
しかもですよ、パソコンっておっきいじゃないですか、私の部屋はワンルームじゃないですか。ただでさえ手狭になってるのに、余計に狭くなるんですよ。ゲームが終わったら元通りにしてよね。
わーきゃーと騒ぐ、裕子ちゃんと美夏ちゃんを横目に、私はお勉強をしています。混ざって遊べば良いじゃないって? ちゃんと混ざりましたよ。そしてコテンパンにされて、役立たず扱いされて放置されたんです、グスン。
だってゲームなんてやった事ないんだもん、仕方ないんでないかい。だから私はふて寝ならぬ、ふて勉強です。その悔しさをバネにしろみたいな感じで、お勉強の妖精さんも燃えてますし。
「こうやってゲームしてると、リアルでもやりたくなるよね」
「あ~、そうだね。その気持ちぼくもわかるな~」
何か言ってますね、嫌な予感です。聞こえなかった事にしましょう、そうしましょう。
「週末にやろうよ! ぼく良い場所を知ってるんだ」
「いいわね! 勿論あんたも行くのよ!」
がしっと、肩を掴まれました。ゆっくりと後ろを向くと、満面の笑みを浮かべた裕子ちゃんが……。勇者さん、ここに大魔王がいますよ!
「いや、私はゲームとか下手だし」
「良いのよ、そんな事!」
「そうだよ。ゲームとリアルは別物だもん」
やんわりと断ってるの! 伝わんないかなぁ!
「わ、私は運動音痴だし。きっと足を引っ張っちゃうよ!」
「そんな事ないよ。毎日運動してるじゃない」
「美夏ちゃん。あれはエクセサイズであって」
「あ~もう! うっさい! あんたも行くの! 決定ね!」
何という事でしょう、決定されちゃいました。世の中には、断れない付き合いっていうのが有るんですね。少し大人の事情を垣間見た気がします。まぁ裕子ちゃんですし、予想はしてましたよ。
ですが、予想外だったのは、その話に反応する妖精さんが居た事です。サバイバルの妖精さんが、ゴールを決めたサッカー選手の様なガッツポーズしてます。どれだけ嬉しいんでしょうか。
そして火の妖精さんが、いつもよりメラメラしています。うん、わかるよ。水の妖精さんが、最近あんまり構ってくれないもんね。
でもね、ちょっと暑いよ。お部屋の気温が上がってるよ。
そして運動の妖精さんは、既にやる気まんまんです。タタタっと走ってから止まると、腹ばいになって銃を撃つ格好を繰り返してます。たぶん連れていかないと、泣きますねこの子。
まぁ連れていきましょう。でも私は、サバイバルゲームなんて、なんにも知らないんだよね。
てな事を考えていたら、お勉強の妖精さんが色々と教えてくれました。妖精さん達がみんな集まって、熱心に聞いてました。いやいや、私もちゃんとお話しを聞きましたよ。
そして、影の立役者が誕生するのです。予想がつきますか? 答えは、洋裁の妖精さんです。
サバイバルゲームをするなら、それなりの恰好をしないと。そんな理由で、端切れでちゃちゃっと迷彩服を作ってくれました。
この子って、凄いを通り越してるよね。ただ、裕子ちゃんの一言ですべて台無しになりましたが。
「何? 迷彩服作ったの? そんなのレンタル出来るはずよ! そもそも、モデルガンなんて高いじゃない。私は食べ物以外に、余計な金は使わない主義なのよ!」
良く言いますね、あんな高そうなパソコンを持ってる癖に。ぐすっと泣きそうな洋裁の妖精さんを、私は必死に宥めました。
大丈夫、私は必ず着るからね。
さて当日がやって来て、またまた早起きです。連れてって~と言わんばかりに、まとわりつくモグをひっぺがして、レンタカーに乗り込みます。当然ながら、運転は裕子ちゃんです。
朝食はドライブスルーで済ませて、車は高速道路に入ります。まぁ裕子ちゃんが運転するなら、迷子になる事もないでしょうね。
これから行くのは、専用のフィールドが有る施設だそうです。流石は裕子ちゃんです。出来る女です。
途中、助手席でウトウトして裕子ちゃんに頭を叩かれつつ、無事に目的の施設に辿り着きました。
受付を終えて、色々とレンタルして着替えて準備します。心配なのは、私達三人が自由参加形式のゲームに参加する事です。妖精さんを連れてるのに大丈夫かなと……。
火の妖精さん以外は、現実に干渉できない妖精さんなので、そこまで心配してないんですがね。
参加するメンバー達に挨拶して、チーム分けをしてゲーム開始です。
私達は女の子で、しかもサバイバルゲーム初参加って事で、色々と丁寧に教えてくれました。ゲーム自体もすっごく楽しかったですよ。
サバイバルの妖精さんは、野山を駆けまわるだけで楽しいみたいです。運動の妖精さんは、上級者の人たちの動きを真似してました。なんだか可愛いって、見とれてたら撃たれましたけど。
火の妖精さんは、予想外に大人しかったです。野山を飛び回った事で、ストレスの発散になったのでしょうか? 山火事を起こす事もなく、ホッとしました。
午前中でいったんゲームが終わり、昼食を取る事になった時です。本部に戻る最中で、私達は重大な事に気が付きました。
「案外、楽しいわね」
「そうだね。でも私は直ぐにやられちゃったよ」
「あんたは、ぼーっとしてるからよ」
「裕子ちゃんは流石だね。何人か倒してたじゃない」
「あんたと違って、こういうのは得意なのよ。ね、美夏!」
同意を求める様に裕子ちゃんが声を掛けましたが、美夏ちゃんからの返答は有りません。周囲を見渡しても、美夏ちゃんの姿が有りません。
なんで気がつかなかったんでしょう。基本的に私達は、一緒に行動していたんです。それなのに、いつどこで美夏ちゃんとはぐれたんでしょう。
焦った私達は、同じチームの仲間達に聞きました。確かにゲーム中に、美夏ちゃんを見たと言う人は多かったです。そうです、さっきまで私の隣に居たんです。焦った参加メンバーの内、特にベテランさんが本部に連絡してくれました。
そして、美夏ちゃん大捜索が始まったのです。
「万が一、怪我して動けないなら不味いな」
「あの、ただの迷子だと思いますし、その内帰って来ると思いますよ」
「そんな訳ないだろ! せっかく参加してくれたのに、事故で楽しくなくなったらかわいそうだろ」
なんて良い人なんでしょうね。私はサバイバルの妖精さんにお願いして、美夏ちゃんを探してもらいました。サバイバルの妖精さんは、ぴゅーって飛んでいきます。
私達が下手に動き回るより、妖精さんにお任せした方が安全なんです。二次災害にもなりませんし。
結局、小一時間程で美夏ちゃんは見つかりました。いつも通り、ただの迷子みたいでした。迷子と言うより遭難ですね。本当に困った子です。
私は参加したメンバーの方々や、捜索をして下さった本部の方々に謝罪をし、昼食を一時間押しで食べました。
楽しかったけど、まさか身内が迷惑をかけるとは。妖精さんは、とても大人しかったのにね。
気を取り直して午後の部です。チームを変えます。どうせなら、バラバラになって戦ってみようって事で、私達もチームを分けてもらいました。裕子ちゃんvs私と美夏ちゃんです。
弱っちい私と迷子星人美夏ちゃんのコンビで、裕子ちゃんに対応できるのでしょうか? 私はこっそりと、サバイバルの妖精さんにお願いしました。
「美夏ちゃんがこれ以上、迷子にならない様に見ていてね」
サバイバルの妖精さんは、コクコクと頷きます。しかし、サバイバルの妖精さんを味方につけた、野生児美夏ちゃんの本領発揮はこれからでした。
これぞまさしく、『森に潜む事、忍者のごとし』でした。と言うかアサシンですかあなたは。
物音を立てずに近づき、後ろからパンって撃つのは、見ていてちょっと怖いです。隠れてる敵チームのメンバーを、片っ端から消していくアサシン美夏ちゃんです。
そしてついに、対決の時が訪れます。
相手はスナイパー裕子ちゃん。何故か、運動の妖精さんが裕子ちゃんの隣で、射撃ポーズを取っています。うん、可愛い。
で、私は何をしてるかって? 早々に撃たれちゃったので、陣地に戻ってスコープを使って覗き見してます。見てる分には楽しいです。
隠れて狙撃する裕子ちゃん、避ける美夏ちゃん。うん? 何で避けられてるの?
「なんかあの子、凄いな」
「午前中、行方不明になった子だろ? あのスナイパーの子だって、結構な数を倒してたぜ」
「なんかの達人か? あの動き只者じゃねぇぜ」
あぁ、噂になってますよ。だって、弾は避けちゃ駄目だよ美夏ちゃん。漫画に出てくる達人の人だよ。某スパイ映画も真っ青だよ。そりゃあ、周りのメンバー達も驚きますよ。
スナイパー裕子ちゃんも、負けてません。物陰に隠れて狙いをすませ、並み居る敵をバッタバッタと、ってそんなに倒しちゃ駄目だよ~! 私達は初心者なんだよ。最初に優しく教えてくれた人を、何で撃っちゃうの!
ベテランさんも真っ青な二人の活躍で、残ったのは裕子ちゃんと美夏ちゃんだけです。
全員倒したら勝ちってルールだそうで、勝負は裕子ちゃんと美夏ちゃんに託されちゃいました。
狙いを定めて撃つ裕子ちゃん、それを避けながら反撃する美夏ちゃん。反撃を見越したのか直ぐにその場を去り、何事も無かったかの様に裕子ちゃんが追撃して。その追撃をひらりと躱して、美夏ちゃんが距離を詰めて。
あぁ~なんでしょうね。異次元ですかここ。
結局勝負はつかずに、引き分けです。裕子ちゃんと美夏ちゃんの二人は、参加メンバー全員から声をかけられてました。
だって、ちょっとした騒ぎになってましたし。私も根掘り葉掘り聞かれて、いい迷惑ですよ。
なんです、あのスペックは? 「なんなのあの二人」って聞かれても、私だって知りませんよ。もう二度とこの二人とは、サバイバルゲームをしたくないです。
まぁね、見てる分には楽しかったですし、妖精さん達も発散出来た様で良いですけどね。
私は今、どこかわからない山の中に居ます。なぜこんな所に居るのかは、裕子ちゃんか美夏ちゃんに聞いてください。それか、サバイバルの妖精さんに聞いてくれても良いです。
お話が通じれば! ですけどね!
それは、一昨日の事でした。
私の部屋で何だか光ってるパソコンを使って、FPSって言うんですか? そのシューティングゲームで、裕子ちゃんと美夏ちゃんが遊んでいました。
何で私の部屋でっていうのは、今更なので置いといて。何でそんな高そうなパソコンを二台も持ってるのなんて事も、裕子ちゃんの事なので置いときましょう。
しかもですよ、パソコンっておっきいじゃないですか、私の部屋はワンルームじゃないですか。ただでさえ手狭になってるのに、余計に狭くなるんですよ。ゲームが終わったら元通りにしてよね。
わーきゃーと騒ぐ、裕子ちゃんと美夏ちゃんを横目に、私はお勉強をしています。混ざって遊べば良いじゃないって? ちゃんと混ざりましたよ。そしてコテンパンにされて、役立たず扱いされて放置されたんです、グスン。
だってゲームなんてやった事ないんだもん、仕方ないんでないかい。だから私はふて寝ならぬ、ふて勉強です。その悔しさをバネにしろみたいな感じで、お勉強の妖精さんも燃えてますし。
「こうやってゲームしてると、リアルでもやりたくなるよね」
「あ~、そうだね。その気持ちぼくもわかるな~」
何か言ってますね、嫌な予感です。聞こえなかった事にしましょう、そうしましょう。
「週末にやろうよ! ぼく良い場所を知ってるんだ」
「いいわね! 勿論あんたも行くのよ!」
がしっと、肩を掴まれました。ゆっくりと後ろを向くと、満面の笑みを浮かべた裕子ちゃんが……。勇者さん、ここに大魔王がいますよ!
「いや、私はゲームとか下手だし」
「良いのよ、そんな事!」
「そうだよ。ゲームとリアルは別物だもん」
やんわりと断ってるの! 伝わんないかなぁ!
「わ、私は運動音痴だし。きっと足を引っ張っちゃうよ!」
「そんな事ないよ。毎日運動してるじゃない」
「美夏ちゃん。あれはエクセサイズであって」
「あ~もう! うっさい! あんたも行くの! 決定ね!」
何という事でしょう、決定されちゃいました。世の中には、断れない付き合いっていうのが有るんですね。少し大人の事情を垣間見た気がします。まぁ裕子ちゃんですし、予想はしてましたよ。
ですが、予想外だったのは、その話に反応する妖精さんが居た事です。サバイバルの妖精さんが、ゴールを決めたサッカー選手の様なガッツポーズしてます。どれだけ嬉しいんでしょうか。
そして火の妖精さんが、いつもよりメラメラしています。うん、わかるよ。水の妖精さんが、最近あんまり構ってくれないもんね。
でもね、ちょっと暑いよ。お部屋の気温が上がってるよ。
そして運動の妖精さんは、既にやる気まんまんです。タタタっと走ってから止まると、腹ばいになって銃を撃つ格好を繰り返してます。たぶん連れていかないと、泣きますねこの子。
まぁ連れていきましょう。でも私は、サバイバルゲームなんて、なんにも知らないんだよね。
てな事を考えていたら、お勉強の妖精さんが色々と教えてくれました。妖精さん達がみんな集まって、熱心に聞いてました。いやいや、私もちゃんとお話しを聞きましたよ。
そして、影の立役者が誕生するのです。予想がつきますか? 答えは、洋裁の妖精さんです。
サバイバルゲームをするなら、それなりの恰好をしないと。そんな理由で、端切れでちゃちゃっと迷彩服を作ってくれました。
この子って、凄いを通り越してるよね。ただ、裕子ちゃんの一言ですべて台無しになりましたが。
「何? 迷彩服作ったの? そんなのレンタル出来るはずよ! そもそも、モデルガンなんて高いじゃない。私は食べ物以外に、余計な金は使わない主義なのよ!」
良く言いますね、あんな高そうなパソコンを持ってる癖に。ぐすっと泣きそうな洋裁の妖精さんを、私は必死に宥めました。
大丈夫、私は必ず着るからね。
さて当日がやって来て、またまた早起きです。連れてって~と言わんばかりに、まとわりつくモグをひっぺがして、レンタカーに乗り込みます。当然ながら、運転は裕子ちゃんです。
朝食はドライブスルーで済ませて、車は高速道路に入ります。まぁ裕子ちゃんが運転するなら、迷子になる事もないでしょうね。
これから行くのは、専用のフィールドが有る施設だそうです。流石は裕子ちゃんです。出来る女です。
途中、助手席でウトウトして裕子ちゃんに頭を叩かれつつ、無事に目的の施設に辿り着きました。
受付を終えて、色々とレンタルして着替えて準備します。心配なのは、私達三人が自由参加形式のゲームに参加する事です。妖精さんを連れてるのに大丈夫かなと……。
火の妖精さん以外は、現実に干渉できない妖精さんなので、そこまで心配してないんですがね。
参加するメンバー達に挨拶して、チーム分けをしてゲーム開始です。
私達は女の子で、しかもサバイバルゲーム初参加って事で、色々と丁寧に教えてくれました。ゲーム自体もすっごく楽しかったですよ。
サバイバルの妖精さんは、野山を駆けまわるだけで楽しいみたいです。運動の妖精さんは、上級者の人たちの動きを真似してました。なんだか可愛いって、見とれてたら撃たれましたけど。
火の妖精さんは、予想外に大人しかったです。野山を飛び回った事で、ストレスの発散になったのでしょうか? 山火事を起こす事もなく、ホッとしました。
午前中でいったんゲームが終わり、昼食を取る事になった時です。本部に戻る最中で、私達は重大な事に気が付きました。
「案外、楽しいわね」
「そうだね。でも私は直ぐにやられちゃったよ」
「あんたは、ぼーっとしてるからよ」
「裕子ちゃんは流石だね。何人か倒してたじゃない」
「あんたと違って、こういうのは得意なのよ。ね、美夏!」
同意を求める様に裕子ちゃんが声を掛けましたが、美夏ちゃんからの返答は有りません。周囲を見渡しても、美夏ちゃんの姿が有りません。
なんで気がつかなかったんでしょう。基本的に私達は、一緒に行動していたんです。それなのに、いつどこで美夏ちゃんとはぐれたんでしょう。
焦った私達は、同じチームの仲間達に聞きました。確かにゲーム中に、美夏ちゃんを見たと言う人は多かったです。そうです、さっきまで私の隣に居たんです。焦った参加メンバーの内、特にベテランさんが本部に連絡してくれました。
そして、美夏ちゃん大捜索が始まったのです。
「万が一、怪我して動けないなら不味いな」
「あの、ただの迷子だと思いますし、その内帰って来ると思いますよ」
「そんな訳ないだろ! せっかく参加してくれたのに、事故で楽しくなくなったらかわいそうだろ」
なんて良い人なんでしょうね。私はサバイバルの妖精さんにお願いして、美夏ちゃんを探してもらいました。サバイバルの妖精さんは、ぴゅーって飛んでいきます。
私達が下手に動き回るより、妖精さんにお任せした方が安全なんです。二次災害にもなりませんし。
結局、小一時間程で美夏ちゃんは見つかりました。いつも通り、ただの迷子みたいでした。迷子と言うより遭難ですね。本当に困った子です。
私は参加したメンバーの方々や、捜索をして下さった本部の方々に謝罪をし、昼食を一時間押しで食べました。
楽しかったけど、まさか身内が迷惑をかけるとは。妖精さんは、とても大人しかったのにね。
気を取り直して午後の部です。チームを変えます。どうせなら、バラバラになって戦ってみようって事で、私達もチームを分けてもらいました。裕子ちゃんvs私と美夏ちゃんです。
弱っちい私と迷子星人美夏ちゃんのコンビで、裕子ちゃんに対応できるのでしょうか? 私はこっそりと、サバイバルの妖精さんにお願いしました。
「美夏ちゃんがこれ以上、迷子にならない様に見ていてね」
サバイバルの妖精さんは、コクコクと頷きます。しかし、サバイバルの妖精さんを味方につけた、野生児美夏ちゃんの本領発揮はこれからでした。
これぞまさしく、『森に潜む事、忍者のごとし』でした。と言うかアサシンですかあなたは。
物音を立てずに近づき、後ろからパンって撃つのは、見ていてちょっと怖いです。隠れてる敵チームのメンバーを、片っ端から消していくアサシン美夏ちゃんです。
そしてついに、対決の時が訪れます。
相手はスナイパー裕子ちゃん。何故か、運動の妖精さんが裕子ちゃんの隣で、射撃ポーズを取っています。うん、可愛い。
で、私は何をしてるかって? 早々に撃たれちゃったので、陣地に戻ってスコープを使って覗き見してます。見てる分には楽しいです。
隠れて狙撃する裕子ちゃん、避ける美夏ちゃん。うん? 何で避けられてるの?
「なんかあの子、凄いな」
「午前中、行方不明になった子だろ? あのスナイパーの子だって、結構な数を倒してたぜ」
「なんかの達人か? あの動き只者じゃねぇぜ」
あぁ、噂になってますよ。だって、弾は避けちゃ駄目だよ美夏ちゃん。漫画に出てくる達人の人だよ。某スパイ映画も真っ青だよ。そりゃあ、周りのメンバー達も驚きますよ。
スナイパー裕子ちゃんも、負けてません。物陰に隠れて狙いをすませ、並み居る敵をバッタバッタと、ってそんなに倒しちゃ駄目だよ~! 私達は初心者なんだよ。最初に優しく教えてくれた人を、何で撃っちゃうの!
ベテランさんも真っ青な二人の活躍で、残ったのは裕子ちゃんと美夏ちゃんだけです。
全員倒したら勝ちってルールだそうで、勝負は裕子ちゃんと美夏ちゃんに託されちゃいました。
狙いを定めて撃つ裕子ちゃん、それを避けながら反撃する美夏ちゃん。反撃を見越したのか直ぐにその場を去り、何事も無かったかの様に裕子ちゃんが追撃して。その追撃をひらりと躱して、美夏ちゃんが距離を詰めて。
あぁ~なんでしょうね。異次元ですかここ。
結局勝負はつかずに、引き分けです。裕子ちゃんと美夏ちゃんの二人は、参加メンバー全員から声をかけられてました。
だって、ちょっとした騒ぎになってましたし。私も根掘り葉掘り聞かれて、いい迷惑ですよ。
なんです、あのスペックは? 「なんなのあの二人」って聞かれても、私だって知りませんよ。もう二度とこの二人とは、サバイバルゲームをしたくないです。
まぁね、見てる分には楽しかったですし、妖精さん達も発散出来た様で良いですけどね。