ど~も! いきなりですが、皆さんは洋裁ってやった事は有りますか?
いやいや、変なボケをかまさないで下さい。砦とか作って攻めたり守ったりする、ソーシャルゲームじゃないです。それは多分、要塞ですから!
ちょっと! だれが、ガードの固い要塞女ですか! 失礼ですね! これでも、男の子とはフレンドリーに接してますよ。彼氏が出来ないのは、今は関係ないっしょ。
まあ出だしの振りで、皆さん何と無く察してると思うので、ちゃっちゃと進めましょう。はい、洋裁の妖精さんが登場しました、ポンってね。
この妖精さんと出会ったのは、自宅で雑誌を見ていた時の事です。
お手製の服を紹介しているページを眺めて、私はびっくりしました。すっごく完成度が高いのです! 「これって素人が作ったの? 嘘でしょ?」と思う位です。
世の中には居るんですね、器用な人が。興味深く記事を読んでいたそんな時です、雑誌を一緒に覗き込む妖精さんが現れました。
私だって、慣れましたよ。妖精さんが現れたくらいで、叫びません! そして熱心に雑誌の記事を眺める妖精さんに、呼びかけました。
「ねぇ、あなたもしかしたら、服とか作るの得意?」
だってねぇ、針と糸を持ってますもん。自分の体と針のどっちが大きいのかって感じですもん。それも可愛いポイントなんですけどね。
それは兎も角、妖精さんは私の問いかけに対して、コクリと小さい頭を縦に動かします。
「もしかしたら、私に作ってくれるとか?」
妖精さんは、首を横に傾けて複雑な表情をしました。なんでしょうこの反応、そこはかとなく嫌な予感がします。ですが、私も負けません!
「私のお洋服を」
妖精さんは、コクコクと頭を縦に動かします。
「作ってくれるの?」
妖精さんは、首を横にブンブン振ります。あぁ、わかりました。この子ってば、ガチ系の妖精さんかもしれません。また、スパルタがやって来る気がします。
「洋服は作るけど、私にも手伝えと?」
妖精さんは、頭を縦に動かしました。「一緒にやらないの?」って顔をしてます。
決定です。私は妖精さんが満足するまで、針と糸でチクチクするんです。それで目とか肩とか痛くなるんです。
少し私は肩を落とします。だって私は、不器用なんですよ。でも、妖精さんは可愛い瞳を輝かせてます。期待でいっぱいの表情を浮かべています。
「花嫁修業じゃあるまいし、裁縫なんて……」
言ってて気が付きましたけど、もしかするとこれって『花嫁修業にピッタリ』ではないでしょうか?
旦那さんが破ったシャツや取れたボタンとかを、スススって直しちゃうんですよ。「ついでに、クッションを作っちゃった」とか言うんですよ。
そうか『お嫁さんまっしぐら』ね。うん、わかった。俄然やる気が沸いてきました。
「今日からあなたは、洋裁の妖精さんね!」
私はそう言って、洋裁の妖精さんとがっちり握手をしました。お互いの目が輝いています。そう、キラッキラです。
服の裾をチョイチョイと、危険予測の妖精さんが引っ張ります。「油断するな」って? まぁなんとかなるじゃないかい! 「いきなり服は無理」だって? そこはほら、妖精さんがいるんだしね。
したら、先ずは材料の調達よね。ってな訳でやって来ました手芸屋さん、イエイ!
服を作ると言っても、糸やハサミに針なんて基本道具から用意しなくては、いけないんです。だって、裁縫する事なんて無いと思ってましたから。
ただ、この時点で気が付いた人はわかってる人ですね。
型紙はどうすんの? うんうん、そうでしょうよ。ただね、型紙自体はお店に売ってますし、ネットでダウンロード出来たりします。
ですが、今回は妖精さんオリジナルのデザインで勝負です。洋裁の妖精さんが、鼻を膨らませてます。
そう、自信作らしいのです。
そして私は、妖精さんの指示で生地を選ぶのです。やはりというか何というか、妖精さんの注文はやっぱり細かいです。
手芸屋さんっていっても、そんなに沢山有る訳では無いのに、何軒か巡った上に結構な荷物になりました。
生地だけじゃなくて、色々買わなきゃいけない物もあるんですよ。ボタン的なやつとかね。
アイロンは持ってるのかって? いやいや、持ってませんし必要有りませんよ。自宅に帰れば、アイロン代わりになってくれる子が居るじゃないですか。火と水と風の妖精さんが居れば、アイロンなんて要りませんよ。
ようやく買い物が終わり、やっと帰宅です。
やたらとおっきな買物袋を両肩に下げて電車に乗る姿って、意外とシュールだと思いませんか? でも、こんな事くらいではめげないんです。
ただまぁ、お金と時間を考えると『既製品を買った方が良いのかも』とは、思ったりしますけどね。
おっと、そんな楽な方に逃げてはいけないんです。ここから私は、茨の道を歩むのです。
そう、永遠のチクチク地獄を!
「やってやるさ!」
私の鼻息は少し荒くなり、妖精さんの気合も充分です。到着次第、荷物を広げました。モグとペチが興味津々な感じで寄ってきます。
お料理の妖精さんは荷物が食材じゃないとわかり、がっかりしてます。君達、裕子ちゃんに毒され過ぎてないかい?
さて、作業開始です。
妖精さんの指示に従って、レッツ裁断です! 生地を広げると、モグ達が上に乗っかり戯れ始めます。
「ちょっとどいててねモグ。これから大事な作業をするからね」
私の言葉を察した飼育の妖精さんが、モグ達をすみっこに連れて行きます。グッジョブよ。
さて、気を取り直して裁断開始です。案外、この作業は楽しいですね。型紙を生地に写しチョキチョキと切る。例えるならパズル? この切り取った生地がどんな形になるんでしょう。ちょっとウキウキしてきます。
ここまではすんなり? といきました……。えぇ、ちょっと失敗して、洋裁の妖精さんを泣かせました。ごめんね、妖精さん。
問題はここからです。チクチクタイムです。ちょっと憂鬱ですが挑戦あるのみ!
先ずは洋裁の妖精さんのお手本を見ます。そして真似します。上手く出来ずに、妖精さんを泣かせます。
チクチク、ぐすっ、チクチク、ぐすっ、チクチク、ぽろり、チクチク、うぇ~ん。はい、この繰り返しです。どれだけ泣かせたか、数えられない位です。本当にごめんなさい、妖精さん。
ある意味、スパルタよりも泣かれる方が厄介です。罪悪感でいっぱいになります。悪気は無いよ、ほんとだよ。頑張れ私、ファイトだ私、妖精さんの笑顔を取り戻すのだ!
回数を重ねるごとに上達するって? そんなのファンタジーですよ。不器用がそんな簡単に直って溜まりますかっての。最初よりは多少ましになりましたけどね。
何日もかけてようやく完成です! 私が失敗した所を洋裁の妖精さんが直し、完成まで漕ぎつけました。流石の妖精さんも、泣き疲れて腫れぼったい顔をしてます。
ただね、言いたくは無いんですけど。このデザインは、奇抜すぎやしませんか?
やたらとボディラインが強調されてるし、所々透けてるし、どこのファッションショーに出て来る作品ですか?
きっとニューヨーカーでも、普段着としては着ませんよ。ましてや、私みたいな田舎者にはハードルが高いです。
試着しといてなんですけどでね。これを着て、大学に行く自信は無いです。
「あんた、エロイわね」
恐る恐る振り返ると、そこには裕子ちゃんの姿が。
「ギャー!」
「うっさいわね!」
「裕子ちゃん、覗きは禁止!」
「良いじゃない、女同士なんだし。しっかし、あんたもそんな服を着る様になったのね。いやいや、良いじゃない。胸の無いあんたでも、似合ってるわよ。エロイし」
「同性からエロイって、エロイって言われた……」
私はヘナヘナと崩れ落ちました。そして、洋裁の妖精さんに土下座しました。
「どうか、普通の服を作って下さい」
で結局、普通のシャツとパンツを作ってくれました。もちろん、妖精さんがですよ。洋裁の妖精さんは『もう道具には触らないで』って顔をするので。ガチ系の妖精さんにも見放される私の不器用さって……。
まあね、私が関わらなければ数時間で終わりました。そんなもんです、世の中なんて。
「それで、あなたは居着くつもりなのね」
洋裁の妖精さんは、あれだけ泣いてたのに、私の自宅から離れるつもりは無いみたいです。
出かける前には、妖精さんのファッションチェックが入ります。これで、私のファッションセンスが磨かれると良いんですが。
いやいや、変なボケをかまさないで下さい。砦とか作って攻めたり守ったりする、ソーシャルゲームじゃないです。それは多分、要塞ですから!
ちょっと! だれが、ガードの固い要塞女ですか! 失礼ですね! これでも、男の子とはフレンドリーに接してますよ。彼氏が出来ないのは、今は関係ないっしょ。
まあ出だしの振りで、皆さん何と無く察してると思うので、ちゃっちゃと進めましょう。はい、洋裁の妖精さんが登場しました、ポンってね。
この妖精さんと出会ったのは、自宅で雑誌を見ていた時の事です。
お手製の服を紹介しているページを眺めて、私はびっくりしました。すっごく完成度が高いのです! 「これって素人が作ったの? 嘘でしょ?」と思う位です。
世の中には居るんですね、器用な人が。興味深く記事を読んでいたそんな時です、雑誌を一緒に覗き込む妖精さんが現れました。
私だって、慣れましたよ。妖精さんが現れたくらいで、叫びません! そして熱心に雑誌の記事を眺める妖精さんに、呼びかけました。
「ねぇ、あなたもしかしたら、服とか作るの得意?」
だってねぇ、針と糸を持ってますもん。自分の体と針のどっちが大きいのかって感じですもん。それも可愛いポイントなんですけどね。
それは兎も角、妖精さんは私の問いかけに対して、コクリと小さい頭を縦に動かします。
「もしかしたら、私に作ってくれるとか?」
妖精さんは、首を横に傾けて複雑な表情をしました。なんでしょうこの反応、そこはかとなく嫌な予感がします。ですが、私も負けません!
「私のお洋服を」
妖精さんは、コクコクと頭を縦に動かします。
「作ってくれるの?」
妖精さんは、首を横にブンブン振ります。あぁ、わかりました。この子ってば、ガチ系の妖精さんかもしれません。また、スパルタがやって来る気がします。
「洋服は作るけど、私にも手伝えと?」
妖精さんは、頭を縦に動かしました。「一緒にやらないの?」って顔をしてます。
決定です。私は妖精さんが満足するまで、針と糸でチクチクするんです。それで目とか肩とか痛くなるんです。
少し私は肩を落とします。だって私は、不器用なんですよ。でも、妖精さんは可愛い瞳を輝かせてます。期待でいっぱいの表情を浮かべています。
「花嫁修業じゃあるまいし、裁縫なんて……」
言ってて気が付きましたけど、もしかするとこれって『花嫁修業にピッタリ』ではないでしょうか?
旦那さんが破ったシャツや取れたボタンとかを、スススって直しちゃうんですよ。「ついでに、クッションを作っちゃった」とか言うんですよ。
そうか『お嫁さんまっしぐら』ね。うん、わかった。俄然やる気が沸いてきました。
「今日からあなたは、洋裁の妖精さんね!」
私はそう言って、洋裁の妖精さんとがっちり握手をしました。お互いの目が輝いています。そう、キラッキラです。
服の裾をチョイチョイと、危険予測の妖精さんが引っ張ります。「油断するな」って? まぁなんとかなるじゃないかい! 「いきなり服は無理」だって? そこはほら、妖精さんがいるんだしね。
したら、先ずは材料の調達よね。ってな訳でやって来ました手芸屋さん、イエイ!
服を作ると言っても、糸やハサミに針なんて基本道具から用意しなくては、いけないんです。だって、裁縫する事なんて無いと思ってましたから。
ただ、この時点で気が付いた人はわかってる人ですね。
型紙はどうすんの? うんうん、そうでしょうよ。ただね、型紙自体はお店に売ってますし、ネットでダウンロード出来たりします。
ですが、今回は妖精さんオリジナルのデザインで勝負です。洋裁の妖精さんが、鼻を膨らませてます。
そう、自信作らしいのです。
そして私は、妖精さんの指示で生地を選ぶのです。やはりというか何というか、妖精さんの注文はやっぱり細かいです。
手芸屋さんっていっても、そんなに沢山有る訳では無いのに、何軒か巡った上に結構な荷物になりました。
生地だけじゃなくて、色々買わなきゃいけない物もあるんですよ。ボタン的なやつとかね。
アイロンは持ってるのかって? いやいや、持ってませんし必要有りませんよ。自宅に帰れば、アイロン代わりになってくれる子が居るじゃないですか。火と水と風の妖精さんが居れば、アイロンなんて要りませんよ。
ようやく買い物が終わり、やっと帰宅です。
やたらとおっきな買物袋を両肩に下げて電車に乗る姿って、意外とシュールだと思いませんか? でも、こんな事くらいではめげないんです。
ただまぁ、お金と時間を考えると『既製品を買った方が良いのかも』とは、思ったりしますけどね。
おっと、そんな楽な方に逃げてはいけないんです。ここから私は、茨の道を歩むのです。
そう、永遠のチクチク地獄を!
「やってやるさ!」
私の鼻息は少し荒くなり、妖精さんの気合も充分です。到着次第、荷物を広げました。モグとペチが興味津々な感じで寄ってきます。
お料理の妖精さんは荷物が食材じゃないとわかり、がっかりしてます。君達、裕子ちゃんに毒され過ぎてないかい?
さて、作業開始です。
妖精さんの指示に従って、レッツ裁断です! 生地を広げると、モグ達が上に乗っかり戯れ始めます。
「ちょっとどいててねモグ。これから大事な作業をするからね」
私の言葉を察した飼育の妖精さんが、モグ達をすみっこに連れて行きます。グッジョブよ。
さて、気を取り直して裁断開始です。案外、この作業は楽しいですね。型紙を生地に写しチョキチョキと切る。例えるならパズル? この切り取った生地がどんな形になるんでしょう。ちょっとウキウキしてきます。
ここまではすんなり? といきました……。えぇ、ちょっと失敗して、洋裁の妖精さんを泣かせました。ごめんね、妖精さん。
問題はここからです。チクチクタイムです。ちょっと憂鬱ですが挑戦あるのみ!
先ずは洋裁の妖精さんのお手本を見ます。そして真似します。上手く出来ずに、妖精さんを泣かせます。
チクチク、ぐすっ、チクチク、ぐすっ、チクチク、ぽろり、チクチク、うぇ~ん。はい、この繰り返しです。どれだけ泣かせたか、数えられない位です。本当にごめんなさい、妖精さん。
ある意味、スパルタよりも泣かれる方が厄介です。罪悪感でいっぱいになります。悪気は無いよ、ほんとだよ。頑張れ私、ファイトだ私、妖精さんの笑顔を取り戻すのだ!
回数を重ねるごとに上達するって? そんなのファンタジーですよ。不器用がそんな簡単に直って溜まりますかっての。最初よりは多少ましになりましたけどね。
何日もかけてようやく完成です! 私が失敗した所を洋裁の妖精さんが直し、完成まで漕ぎつけました。流石の妖精さんも、泣き疲れて腫れぼったい顔をしてます。
ただね、言いたくは無いんですけど。このデザインは、奇抜すぎやしませんか?
やたらとボディラインが強調されてるし、所々透けてるし、どこのファッションショーに出て来る作品ですか?
きっとニューヨーカーでも、普段着としては着ませんよ。ましてや、私みたいな田舎者にはハードルが高いです。
試着しといてなんですけどでね。これを着て、大学に行く自信は無いです。
「あんた、エロイわね」
恐る恐る振り返ると、そこには裕子ちゃんの姿が。
「ギャー!」
「うっさいわね!」
「裕子ちゃん、覗きは禁止!」
「良いじゃない、女同士なんだし。しっかし、あんたもそんな服を着る様になったのね。いやいや、良いじゃない。胸の無いあんたでも、似合ってるわよ。エロイし」
「同性からエロイって、エロイって言われた……」
私はヘナヘナと崩れ落ちました。そして、洋裁の妖精さんに土下座しました。
「どうか、普通の服を作って下さい」
で結局、普通のシャツとパンツを作ってくれました。もちろん、妖精さんがですよ。洋裁の妖精さんは『もう道具には触らないで』って顔をするので。ガチ系の妖精さんにも見放される私の不器用さって……。
まあね、私が関わらなければ数時間で終わりました。そんなもんです、世の中なんて。
「それで、あなたは居着くつもりなのね」
洋裁の妖精さんは、あれだけ泣いてたのに、私の自宅から離れるつもりは無いみたいです。
出かける前には、妖精さんのファッションチェックが入ります。これで、私のファッションセンスが磨かれると良いんですが。