私の周りには妖精さんが居ます。妖精さんは、手のひらサイズのデフォルメされた様な二頭身の姿で、何時も私の周りをひらひらと飛んだり、ぽてぽてと歩いたりして着いて来ます。
妖精さん達は周りの人に見えてません。何故か私しか見えない様です。前に家族や友人に妖精さんの事を話した事は有りますが、首をかしげるだけで理解はされませんでした。逆に変な事を言ってる様に心配され、私を精神科に連れていこうとしました。困った両親です。
誰にも見えない、私しか見えない妖精さん達。別に誰にも理解されなくても良いのです。だってここに居るんだから、妖精さん達は。
妖精さん達は可愛くて、賢くて、誰よりも勤勉で、誰よりも楽しい事が好きで、ずっと私の側に居てくれる、大切で愛おしい存在です。妖精さん達も私を好いてくれている様で、いつも私に寄り添ってくれます。
だけど問題もあります。妖精さん達は言葉が喋れないんです。厳密には、妖精さんは口をモゴモゴしてるんですけど、それが言葉なのか何か私にはわからないんです。
ただ、そんなのは些細な問題です。私の言葉は妖精さんに伝わるし、妖精さんの気持ちを私は感じる事が出来ます。多分ですけど、言葉とは違う別の方法で私達はコミュニケーションをしているのです。
それが何かと問われるとわからないですが……。何だろう。テレパシー的な? きっとそんな感じだと思います。
私が最初に妖精さんに出会ったのは、確か小学校低学年の頃だったと思います。私は北海道の製紙工場が盛んな街で生まれて育ちました。
ある雪の降り始めた朝、学校に行く為に歩いていると、積もった雪の上にひらひらと舞う白い綿みたいな物を見つけました。よく見ると『手のひら位の小さい人形っぽい何か』が、躍る様に雪の上を飛び跳ねていたのです。
私はすごく驚きました。だって、子供でもわかります。動物ではない、虫でもない、ましてや『人形サイズの人間』なんて、この世に存在するわけないんですから。
でも、当時のわたしは純粋だったんです。そして、興味津々に飛び跳ねている子をじっと見つめました。暫く見つめていたら、その子が私が見ている事に気が付いて、私に近寄ってきました。その子は満面の笑みで私に笑かけて、ペコリと可愛くお辞儀をしました。そして私は、お辞儀を返してその子に言いました。
「ねぇ。あなたはだれさ? 触ってもいい?」
その子は口をパクパクさせて何か言ってましたが、当時の私には理解出来ませんでした。でも笑顔で頷く様子を見て触って良いんだと思い、私はそっと手を伸ばしてみました。
触ってみるとその子はとても冷たく、身体は雪の様に白く綺麗で、朝の光を浴びてキラキラと輝いていました。
チョンチョンと私がその子を突くと、その子はくすぐったいのか、けらけらと笑いながら雪の上を転げまわります。その姿がとっても可愛くて、私は自然と微笑んでいました。私は何度もその子を突き、その度にその子は笑いながら雪の上を転げまわります。
それが楽しくて。暫くの間はそうしていたと思います。やがてその子は私から少し離れて、ぴょんぴょんと飛び跳ねて私を見ていました。私は「着いて来て」って言ってるのかと感じました。
その子は、新雪の上をふわふわと飛び跳ねて、時折私の方を振り向きます。私は、その後に続いて誰も踏んでいない新雪をザクザクと踏み、その子を追いかけました。
でも、やっぱり不思議です。この子は誰なんだろう? その子の後ろ姿を追いながら、そんな事を考えてました。
「ねぇ。あなたはもしかして妖精さんかい?」
何故そんな事を言ったのか、自分でもよくわかりません。ふと、口から出でいました。その時の私は、きょとんとした顔をしていたのかもしれません。でも、その子は優しく微笑むと、コクリと頷いてくれました。
それから私は、学校の事など完全に忘れて、一日中妖精さんと遊びました。どの位の時間が経ったか分からないけど、気が付くと私は自宅近くの森の中に居ました。
やがて日が沈みます。森の中ですから、当然ながら周囲には街灯が有りません。月の光は、木々に遮られて少ししか届きません。遊びなれた場所でさえ、昼間とは違う空間に様変わりします。辺りを見回すと妖精さんの姿は在りません。私は少し心細くなり呼びかけます。
「よ、妖精さん? どこさ? どこだべ?」
多分怖くなっちゃったんだと思います。だから、その時の私は声が上擦ってたと思います。そりゃそうです。大の大人でさえ多少は怖さを感じると思いますし、ましてや私はまだ小さかったんです。
「ねぇ、妖精さん。で、出てきて遊ぶっしょ。ねぇ、ようせいさん」
やっぱり反応は有りません。妖精さんは何処かに行ってしまったんです。取り残された私は、私はその場でうずくまり、じっと固まってしまいました。
どの位そうしていたんでしょう。やがて遠くの方から声がします。
「お~い! しずく~! どこだべ~!」
「しずくちゃ~ん! どこだ~!」
声は段々と大きくなります。声は一つじゃ有りません、沢山の人が近くまで来ている事がわかり、私は思わず立ち上がりました。
「おと~さ~ん! おか~さ~ん!」
私は無事に、大人達に連れられて家に帰りました。お母さんとお父さんに物凄く怒られました。妖精さんの事を説明したら、馬鹿言うなと更に怒られました。でも、暗闇の中でぎゅって抱きしめられた事は、今でも忘れません。
次の日、学校に行こうと外に出ると、妖精さんは私の事を待っていたかの様に、笑顔を浮かべて雪の上を飛び跳ねてます。
「昨日はどこ行ったっしょ」
私はちょっと怒ってました。だって置いてけぼりにするんだもん。でも、そんな私に対して妖精さんは、少し首を傾げてにこっと笑います。
その様子を見ていると、何だか怒っているのが馬鹿馬鹿しくなって来ます。そして私は、しゃがんで妖精さんの頭を撫でました。
「ごめんね。今日は遊べないのさ。昨日沢山怒られたっしょ。また今度遊ぶべさ」
そう私が言うと妖精さんは首をコクリと傾げて、再び私の周りを跳ね回ります。あぁ、きっと伝わってないです。
昨日は学校をさぼったから、今日は行かなきゃ怒られます。妖精さんの『一緒に遊びたい』って気持ちもわかります。私も同じです。私は少し悲しくなり、もう一度妖精さんの頭を撫でて言いました。
「したっけ、遊べないのさ。学校行くっしょ。今度またね」
私の表情を読み取ったのか、妖精さんは私に飛び乗ってきました。そして、冷たい体を頬に摺り寄せてきます。妖精さんの身体はとても冷たかったけれど、不思議と私の心は温かくなっていました。
「もう、仕方ないね。学校まで一緒に行くべさ?」
そして私は、妖精さんを手のひらに乗せて、突いたりお喋りしながら、学校へ向かいました。妖精さんは、手の上でキャッキャとはしゃいでいました。とっても楽しい時間です。でもそんな時間はあっという間に過ぎていきます。
学校の前まで着くと、私は妖精さんを新雪の上に降ろします。妖精さんは悲しそうな表情を浮かべながらも、私に手を振ってくれました。私も少し悲しくなり、手を振り返して校内に入りました。
教室に入ると、クラスメイトに昨日の事を心配されました。クラスメイトに妖精さんの事を話しましたが、誰も信じてはくれませんでした。それ以来、私は不思議な子と思われる様になりました。不思議じゃないし、普通だし!
その日、私は授業が終わるのが待ち遠しかったです。授業が終わると、私はクラスメイトにさよならを言い、教室を飛び出し、廊下を走り、校門を出ました。きっと、妖精さんが待っている気がしたからです。
そして、予想は当たりました。妖精さんは校門の横辺りで私を待っていてくれました。私はうれしくなって、妖精さんを手に乗せます。
「待っててくれたんかい? 一緒に遊ぶべさ?」
妖精さんは私の手の上で体いっぱい使って、遊ぼうと言っている様な仕草をします。
「森に行くと心配されるっしょ。したっけ公園に行くべさ!」
私の住んでいた街は冬になると公園に柵が張られ、それがスケートリンクになります。だけど、ほとんどがアイスホッケーをする男子達に占領されてしまいます。
だから私と妖精さんは、出来るだけ積もった雪が踏み荒らされていない辺りで、追いかけっこをして遊びました。日が暮れるまでの楽しい時間は過ぎ、今度はちゃんと妖精さんにお別れをして家に戻ります。
それから朝は妖精さんと一緒に登校し、帰りは妖精さんと遊ぶ。そんな毎日を私は繰り返しました。ちなみに、一度妖精さんを家の中に招待しようと試みましたが、妖精さんは温かい所が苦手なのか、家の中には入って来ませんでした。
猛吹雪の日は外に出る事が出来ません。
ある日、私が寂しく独り部屋で勉強をしていると、氷がびっしりと張った窓を叩く音が聞こえました。
窓から外を覗き込むと、大量に増えた妖精さんが窓一面に張り付いていました。流石に私は、腰を抜かす程驚き叫び声を上げます。増えた妖精さん達は、驚く私をみてお腹を抱える様に笑っていました。
やがて、春が来て雪が解けていきます。何時も私を迎える様に玄関で待ち構えている妖精さんは、段々と姿を現さなくなりました。
「あの子は、雪の妖精さんだったのかも知れないっしょ」
あの妖精さんは、雪の降り始めと共に姿を現し、雪の終わりと共に去って行きました。だから、私は雪の妖精なんだと思います。
雪の妖精さんが去った後、少し寂しかったです。だって毎日の様に遊んでいたんですもん。でも寂しい時間は一時でした。なぜなら、別の妖精さんが次々と私に集まる様になったからです。
それから私は、妖精さん達に囲まれて成長しました。やがて高校を卒業した私は、東京の大学に合格し上京しました。私の所に集まって来た妖精さん達は、上京しても着いてきてくれました。おかげで、上京や初めての一人暮らしは、少しも寂しさを感じる事が有りませんでした。
妖精さん達は、何時も賑やかに、そして可愛く私の周りを飛び跳ねています。一人暮らしの生活は、妖精さん達によって支えられ、疲れた時には癒しを与えてくれます。
多分、私は世界一の幸せ者なんでしょう。私と妖精さん達の暮らしはこれからも続いて行きます。
妖精さん達は周りの人に見えてません。何故か私しか見えない様です。前に家族や友人に妖精さんの事を話した事は有りますが、首をかしげるだけで理解はされませんでした。逆に変な事を言ってる様に心配され、私を精神科に連れていこうとしました。困った両親です。
誰にも見えない、私しか見えない妖精さん達。別に誰にも理解されなくても良いのです。だってここに居るんだから、妖精さん達は。
妖精さん達は可愛くて、賢くて、誰よりも勤勉で、誰よりも楽しい事が好きで、ずっと私の側に居てくれる、大切で愛おしい存在です。妖精さん達も私を好いてくれている様で、いつも私に寄り添ってくれます。
だけど問題もあります。妖精さん達は言葉が喋れないんです。厳密には、妖精さんは口をモゴモゴしてるんですけど、それが言葉なのか何か私にはわからないんです。
ただ、そんなのは些細な問題です。私の言葉は妖精さんに伝わるし、妖精さんの気持ちを私は感じる事が出来ます。多分ですけど、言葉とは違う別の方法で私達はコミュニケーションをしているのです。
それが何かと問われるとわからないですが……。何だろう。テレパシー的な? きっとそんな感じだと思います。
私が最初に妖精さんに出会ったのは、確か小学校低学年の頃だったと思います。私は北海道の製紙工場が盛んな街で生まれて育ちました。
ある雪の降り始めた朝、学校に行く為に歩いていると、積もった雪の上にひらひらと舞う白い綿みたいな物を見つけました。よく見ると『手のひら位の小さい人形っぽい何か』が、躍る様に雪の上を飛び跳ねていたのです。
私はすごく驚きました。だって、子供でもわかります。動物ではない、虫でもない、ましてや『人形サイズの人間』なんて、この世に存在するわけないんですから。
でも、当時のわたしは純粋だったんです。そして、興味津々に飛び跳ねている子をじっと見つめました。暫く見つめていたら、その子が私が見ている事に気が付いて、私に近寄ってきました。その子は満面の笑みで私に笑かけて、ペコリと可愛くお辞儀をしました。そして私は、お辞儀を返してその子に言いました。
「ねぇ。あなたはだれさ? 触ってもいい?」
その子は口をパクパクさせて何か言ってましたが、当時の私には理解出来ませんでした。でも笑顔で頷く様子を見て触って良いんだと思い、私はそっと手を伸ばしてみました。
触ってみるとその子はとても冷たく、身体は雪の様に白く綺麗で、朝の光を浴びてキラキラと輝いていました。
チョンチョンと私がその子を突くと、その子はくすぐったいのか、けらけらと笑いながら雪の上を転げまわります。その姿がとっても可愛くて、私は自然と微笑んでいました。私は何度もその子を突き、その度にその子は笑いながら雪の上を転げまわります。
それが楽しくて。暫くの間はそうしていたと思います。やがてその子は私から少し離れて、ぴょんぴょんと飛び跳ねて私を見ていました。私は「着いて来て」って言ってるのかと感じました。
その子は、新雪の上をふわふわと飛び跳ねて、時折私の方を振り向きます。私は、その後に続いて誰も踏んでいない新雪をザクザクと踏み、その子を追いかけました。
でも、やっぱり不思議です。この子は誰なんだろう? その子の後ろ姿を追いながら、そんな事を考えてました。
「ねぇ。あなたはもしかして妖精さんかい?」
何故そんな事を言ったのか、自分でもよくわかりません。ふと、口から出でいました。その時の私は、きょとんとした顔をしていたのかもしれません。でも、その子は優しく微笑むと、コクリと頷いてくれました。
それから私は、学校の事など完全に忘れて、一日中妖精さんと遊びました。どの位の時間が経ったか分からないけど、気が付くと私は自宅近くの森の中に居ました。
やがて日が沈みます。森の中ですから、当然ながら周囲には街灯が有りません。月の光は、木々に遮られて少ししか届きません。遊びなれた場所でさえ、昼間とは違う空間に様変わりします。辺りを見回すと妖精さんの姿は在りません。私は少し心細くなり呼びかけます。
「よ、妖精さん? どこさ? どこだべ?」
多分怖くなっちゃったんだと思います。だから、その時の私は声が上擦ってたと思います。そりゃそうです。大の大人でさえ多少は怖さを感じると思いますし、ましてや私はまだ小さかったんです。
「ねぇ、妖精さん。で、出てきて遊ぶっしょ。ねぇ、ようせいさん」
やっぱり反応は有りません。妖精さんは何処かに行ってしまったんです。取り残された私は、私はその場でうずくまり、じっと固まってしまいました。
どの位そうしていたんでしょう。やがて遠くの方から声がします。
「お~い! しずく~! どこだべ~!」
「しずくちゃ~ん! どこだ~!」
声は段々と大きくなります。声は一つじゃ有りません、沢山の人が近くまで来ている事がわかり、私は思わず立ち上がりました。
「おと~さ~ん! おか~さ~ん!」
私は無事に、大人達に連れられて家に帰りました。お母さんとお父さんに物凄く怒られました。妖精さんの事を説明したら、馬鹿言うなと更に怒られました。でも、暗闇の中でぎゅって抱きしめられた事は、今でも忘れません。
次の日、学校に行こうと外に出ると、妖精さんは私の事を待っていたかの様に、笑顔を浮かべて雪の上を飛び跳ねてます。
「昨日はどこ行ったっしょ」
私はちょっと怒ってました。だって置いてけぼりにするんだもん。でも、そんな私に対して妖精さんは、少し首を傾げてにこっと笑います。
その様子を見ていると、何だか怒っているのが馬鹿馬鹿しくなって来ます。そして私は、しゃがんで妖精さんの頭を撫でました。
「ごめんね。今日は遊べないのさ。昨日沢山怒られたっしょ。また今度遊ぶべさ」
そう私が言うと妖精さんは首をコクリと傾げて、再び私の周りを跳ね回ります。あぁ、きっと伝わってないです。
昨日は学校をさぼったから、今日は行かなきゃ怒られます。妖精さんの『一緒に遊びたい』って気持ちもわかります。私も同じです。私は少し悲しくなり、もう一度妖精さんの頭を撫でて言いました。
「したっけ、遊べないのさ。学校行くっしょ。今度またね」
私の表情を読み取ったのか、妖精さんは私に飛び乗ってきました。そして、冷たい体を頬に摺り寄せてきます。妖精さんの身体はとても冷たかったけれど、不思議と私の心は温かくなっていました。
「もう、仕方ないね。学校まで一緒に行くべさ?」
そして私は、妖精さんを手のひらに乗せて、突いたりお喋りしながら、学校へ向かいました。妖精さんは、手の上でキャッキャとはしゃいでいました。とっても楽しい時間です。でもそんな時間はあっという間に過ぎていきます。
学校の前まで着くと、私は妖精さんを新雪の上に降ろします。妖精さんは悲しそうな表情を浮かべながらも、私に手を振ってくれました。私も少し悲しくなり、手を振り返して校内に入りました。
教室に入ると、クラスメイトに昨日の事を心配されました。クラスメイトに妖精さんの事を話しましたが、誰も信じてはくれませんでした。それ以来、私は不思議な子と思われる様になりました。不思議じゃないし、普通だし!
その日、私は授業が終わるのが待ち遠しかったです。授業が終わると、私はクラスメイトにさよならを言い、教室を飛び出し、廊下を走り、校門を出ました。きっと、妖精さんが待っている気がしたからです。
そして、予想は当たりました。妖精さんは校門の横辺りで私を待っていてくれました。私はうれしくなって、妖精さんを手に乗せます。
「待っててくれたんかい? 一緒に遊ぶべさ?」
妖精さんは私の手の上で体いっぱい使って、遊ぼうと言っている様な仕草をします。
「森に行くと心配されるっしょ。したっけ公園に行くべさ!」
私の住んでいた街は冬になると公園に柵が張られ、それがスケートリンクになります。だけど、ほとんどがアイスホッケーをする男子達に占領されてしまいます。
だから私と妖精さんは、出来るだけ積もった雪が踏み荒らされていない辺りで、追いかけっこをして遊びました。日が暮れるまでの楽しい時間は過ぎ、今度はちゃんと妖精さんにお別れをして家に戻ります。
それから朝は妖精さんと一緒に登校し、帰りは妖精さんと遊ぶ。そんな毎日を私は繰り返しました。ちなみに、一度妖精さんを家の中に招待しようと試みましたが、妖精さんは温かい所が苦手なのか、家の中には入って来ませんでした。
猛吹雪の日は外に出る事が出来ません。
ある日、私が寂しく独り部屋で勉強をしていると、氷がびっしりと張った窓を叩く音が聞こえました。
窓から外を覗き込むと、大量に増えた妖精さんが窓一面に張り付いていました。流石に私は、腰を抜かす程驚き叫び声を上げます。増えた妖精さん達は、驚く私をみてお腹を抱える様に笑っていました。
やがて、春が来て雪が解けていきます。何時も私を迎える様に玄関で待ち構えている妖精さんは、段々と姿を現さなくなりました。
「あの子は、雪の妖精さんだったのかも知れないっしょ」
あの妖精さんは、雪の降り始めと共に姿を現し、雪の終わりと共に去って行きました。だから、私は雪の妖精なんだと思います。
雪の妖精さんが去った後、少し寂しかったです。だって毎日の様に遊んでいたんですもん。でも寂しい時間は一時でした。なぜなら、別の妖精さんが次々と私に集まる様になったからです。
それから私は、妖精さん達に囲まれて成長しました。やがて高校を卒業した私は、東京の大学に合格し上京しました。私の所に集まって来た妖精さん達は、上京しても着いてきてくれました。おかげで、上京や初めての一人暮らしは、少しも寂しさを感じる事が有りませんでした。
妖精さん達は、何時も賑やかに、そして可愛く私の周りを飛び跳ねています。一人暮らしの生活は、妖精さん達によって支えられ、疲れた時には癒しを与えてくれます。
多分、私は世界一の幸せ者なんでしょう。私と妖精さん達の暮らしはこれからも続いて行きます。