神社で土地神が現れ、助言めいた事を呟いて消えた。
土地神が伝えたかった事は、ペスカと冬也の二人は一切理解出来ずにいる。ただ、土地神の神威にあてられ、意識を失っている空を放って置く訳にはいかない。取り敢えず二人は、空を自宅に帰す事にした。
「取り敢えず俺が背負うから、ペスカは道案内頼む。空ちゃんの家あんまり覚えて無いんだよ」
自ら率先して背負おうとするのは、冬也らしい優しさであろう。しかし、冬也とて思春期の男の子である。決して下心が無いとは、言い切れまい。
ただ、冬也はそれをグッと呑み込んだ。「空ちゃんに失礼だ」それが、冬也の意思を鋼に変えた。
だが、冬也の一挙手一投足を観察していたペスカには通用しない。ペスカは少し眉を吊り上げる。
「わかったけど、お兄ちゃん。空ちゃんで変な妄想したら泣かすよ!」
「何言ってるんだよ。馬鹿だな~」
冬也は空を背負って立ちが上がる。背中には柔らかな感触が当たる。少し頬を緩ませかけた所を、冬也は真剣な顔へと変える。そんな冬也を、ペスカはじっと見つめて声を荒げた。
「ほら、やっぱりだ! お兄ちゃんの顔がにやけてる。空ちゃんはおっぱい大きいもんね!」
「な、何言ってんだよ。にやけてねぇよ」
冬也が体を揺らす度に、背に心地よい感触を感じる。仕方ない。だけど、考えてはいけない。「紳士であれ」と冬也は自分に言い聞かせる。しかし、ペスカの怒りは収まらない。
「みんなおっぱい、おっぱいって。確かに空ちゃんは、清楚系美人でおっぱいが大きいけど、おに~ちゃんは私のおっぱいに欲情しなよ!」
顔を真っ赤にして捲し立てるペスカに、冬也は少し汗をかきながら答える。
「兄妹で何言ってんだ馬鹿!」
「良いんだよ。血が繋がってないから。夜中に襲いに来なよ! じゃないと私が襲いに行くよ!」
「だから、さっきから馬鹿じゃねぇのか! 恥ずかしい事言ってんじゃねぇよ」
ペスカは頬を膨らませて先を歩く。そして冬也は空を揺らさない様に支えると、ペスカの後に続いた。神社を出て住宅街を歩くと、直ぐに空の自宅が見えて来た。
「あれが空ちゃんのお家だよ。残念だったねお兄ちゃん」
冬也は至って平然を装っているつもりだ。しかしその葛藤は、ペスカにはお見通しなのだろう。
「続きが味わいたかったら、私ので我慢するんだね」
ペスカが頬を膨らませながら、呼び鈴を押す。しかし応答は無い。どうしようかと二人が考えていると、冬也の背中から小さな声が聞こえた。
「ペスカちゃん。両親は共働きでいないの。それと冬也さん、ありがとうございます。もう降ろしてください」
ペスカが冬也の背に視線を向けると、顔を真っ赤に染めた空がいた。冬也が背から降ろすと、ペスカは空に詰め寄る。
「空ちゃん。いつから目を覚ましていたの?」
「神社を出た辺りから……」
ペスカは目を見開いて、空を見つめる。
「空ちゃん。恐ろしい子。その魔乳でお兄ちゃんを見事に誘惑するとは」
「ゆ、誘惑はしてないよ……。冬也さんの背中が温かかったからつい……」
「そう言う事にしておくよ。でも、お兄ちゃんに手を出したら、その乳モグからね」
空が胸を両手で隠して冬也の背中に隠れると、ペスカは手をワキワキさせてにじり寄る。ペスカが冬也の目の前を通った所で、冬也の鉄拳がペスカの脳天にさく裂した。
「さっきから、やかましいぞ! ここは住宅街なんだぞ!」
「く~そ~、お兄ちゃんめ!」
空の両親は、鍵を掛けて出たのだろう。空は慌てて家を飛び出した為に、鍵を持っていない。家に入るには、両親の帰宅を待つしかない。夕方まで、空を放置する訳にはいかない。
時計を見ると既に午前十時を越えている。ペスカと冬也は、既に学校へ行く気が失せている。そして二人は、空を自宅に連れて行く事にした。
「途中で食材の買い出しをするから、回り道して帰るぞ」
「そうしよう!」
「私はお腹が空いてきました」
歩き出す冬也の左腕を取り、ペスカは空を見ながらこれ見よがしに胸を押し付ける。それを見た空は、冬也の右腕を胸で挟む様に組む。
「空ちゃん、それは私に勝負を挑もうって事ね! OK! 掛かって来なよ」
「ペスカちゃんとでは、戦力差が有り過ぎて勝負にならないよ!」
微笑んでペスカを見る空に対して、ペスカは悔しそうに空を見返す。この状況を、思春期の男子なら喜ばないはずがない。しかし、冬也は声を大にした。
「お前ら五月蠅い! 二人共離れろ!」
「嫌!」
「嫌です!」
いつもなら鉄拳をお見舞いする所だが、両手を塞がれている為、何も出来ない。冬也は、深いため息をついた。
「これは女の戦いだよ、お兄ちゃん。邪乳退散!」
「そうですよ、冬也さん。ブラコン撲滅!」
お互いに引こうとしない美少女二人に、冬也は諦め気味に歩き出した。
両手に花とはよく言ったものである。だが、それは時と場合によるだろう。三人で横に広がって歩ける程、日本の道は広くない。車の邪魔になり、他の歩行者の邪魔となる。
そして、スーパーマーケットに入れば、カートが引けないどころか、他の客に迷惑をかける事になる。
「いい加減、そろそろ離れろ!」
冬也とて、右腕の感触が無くなるのは、少し残念である。しかし、少し声色を変えて言い放った。美少女二人は、冬也を理解しているのだろう。これ以上は、冬也を怒らせると。
しかし、渋々と冬也から離れる美少女二人は、片やカートは私が引きますと言い、片や品物は私が取るねと張り切っていた。
「昼飯は何が食いたい?」
「パスタがいい!」
「パスタにしましょ!」
声がピッタリ合う所が、仲の良さの現れだろう。そして、冬也は尚も尋ねる。
「夜飯は?」
「カレーだね!」
「カレーです!」
声を揃えて答える二人を見て、少し笑いが込み上げる。
「お前ら、いつも仲良いよな」
「そりゃ、幼馴染だし。お兄ちゃんを、誘惑さえしなければ」
「幼馴染だから、仲は良いですよ。年中お兄さんに、発情さえしなければ」
買物を終えて、三人は自宅へ戻る。冬也の両手には、美少女の胸では無く荷物が有る、その美少女二人は、仲良く話をしていた。今朝の出来事を忘れる様に、はしゃぐ二人を見て、冬也は思い出して笑顔を浮かべた。
自宅に辿り着くと三人で買い物を片付ける。冬也は昼ご飯の支度を始め、空が手伝う。それをペスカが恨めしそうに見る。暫くするとペスカは興味を失くし、TVを見始めた。
「いいか? こうやってオリーブオイルに、ニンニクの香りを移して行くんだよ。ゆっくり弱火でな」
「わぁ~、勉強になります。冬也さん素敵!」
楽しそうに料理をする冬也と空を横目に、ペスカは毒づく。
「何が素敵だ! けっ!」
「ペスカちゃん、感じ悪い!」
「うっさい魔乳星人! 美人で性格良くておっぱい大きい空ちゃんは、モテモテなんだから。違う人狙いなよ!」
「それは私の台詞だよ。私はペスカちゃんみたいに明るく無いし、人見知りだし……」
「……仕方ないから空ちゃんは二号さ、あぅ」
悲しそうに俯く空を見て、ペスカが言いかけた所で台拭きが飛んでくる。
「いい加減にして、テーブル吹けペスカ! ごめんな空ちゃん」
無遠慮な言葉を投げ合える間柄は、近親者でも難しい場合が有る。何よりも、ライバルとは対等でなくては成り立たない。親友も同様であろう。
空がペスカを想う様に、ペスカも空を想う。そして、冬也のさり気ない優しさが加わると、やっといつもの日常が戻った感覚になる。俯いていた空は、吹き出すように笑った。
料理を終え、三人で食事をする。ガヤガヤと賑やかな雰囲気に食事が進む。食事を終え片付け終わった所で、再びテーブルに三人とも着く。三人がテーブルに着くとペスカから声が掛かる。
「さて、情報整理と行こうか! 第一回対策会議in東郷邸の開催!」
穏やかだった空気が、三人の表情と共に、少し張り詰めたものに変わる。取り巻く状況の把握と現状の打破に向けた、最初の一歩を三人は踏み出した。
土地神が伝えたかった事は、ペスカと冬也の二人は一切理解出来ずにいる。ただ、土地神の神威にあてられ、意識を失っている空を放って置く訳にはいかない。取り敢えず二人は、空を自宅に帰す事にした。
「取り敢えず俺が背負うから、ペスカは道案内頼む。空ちゃんの家あんまり覚えて無いんだよ」
自ら率先して背負おうとするのは、冬也らしい優しさであろう。しかし、冬也とて思春期の男の子である。決して下心が無いとは、言い切れまい。
ただ、冬也はそれをグッと呑み込んだ。「空ちゃんに失礼だ」それが、冬也の意思を鋼に変えた。
だが、冬也の一挙手一投足を観察していたペスカには通用しない。ペスカは少し眉を吊り上げる。
「わかったけど、お兄ちゃん。空ちゃんで変な妄想したら泣かすよ!」
「何言ってるんだよ。馬鹿だな~」
冬也は空を背負って立ちが上がる。背中には柔らかな感触が当たる。少し頬を緩ませかけた所を、冬也は真剣な顔へと変える。そんな冬也を、ペスカはじっと見つめて声を荒げた。
「ほら、やっぱりだ! お兄ちゃんの顔がにやけてる。空ちゃんはおっぱい大きいもんね!」
「な、何言ってんだよ。にやけてねぇよ」
冬也が体を揺らす度に、背に心地よい感触を感じる。仕方ない。だけど、考えてはいけない。「紳士であれ」と冬也は自分に言い聞かせる。しかし、ペスカの怒りは収まらない。
「みんなおっぱい、おっぱいって。確かに空ちゃんは、清楚系美人でおっぱいが大きいけど、おに~ちゃんは私のおっぱいに欲情しなよ!」
顔を真っ赤にして捲し立てるペスカに、冬也は少し汗をかきながら答える。
「兄妹で何言ってんだ馬鹿!」
「良いんだよ。血が繋がってないから。夜中に襲いに来なよ! じゃないと私が襲いに行くよ!」
「だから、さっきから馬鹿じゃねぇのか! 恥ずかしい事言ってんじゃねぇよ」
ペスカは頬を膨らませて先を歩く。そして冬也は空を揺らさない様に支えると、ペスカの後に続いた。神社を出て住宅街を歩くと、直ぐに空の自宅が見えて来た。
「あれが空ちゃんのお家だよ。残念だったねお兄ちゃん」
冬也は至って平然を装っているつもりだ。しかしその葛藤は、ペスカにはお見通しなのだろう。
「続きが味わいたかったら、私ので我慢するんだね」
ペスカが頬を膨らませながら、呼び鈴を押す。しかし応答は無い。どうしようかと二人が考えていると、冬也の背中から小さな声が聞こえた。
「ペスカちゃん。両親は共働きでいないの。それと冬也さん、ありがとうございます。もう降ろしてください」
ペスカが冬也の背に視線を向けると、顔を真っ赤に染めた空がいた。冬也が背から降ろすと、ペスカは空に詰め寄る。
「空ちゃん。いつから目を覚ましていたの?」
「神社を出た辺りから……」
ペスカは目を見開いて、空を見つめる。
「空ちゃん。恐ろしい子。その魔乳でお兄ちゃんを見事に誘惑するとは」
「ゆ、誘惑はしてないよ……。冬也さんの背中が温かかったからつい……」
「そう言う事にしておくよ。でも、お兄ちゃんに手を出したら、その乳モグからね」
空が胸を両手で隠して冬也の背中に隠れると、ペスカは手をワキワキさせてにじり寄る。ペスカが冬也の目の前を通った所で、冬也の鉄拳がペスカの脳天にさく裂した。
「さっきから、やかましいぞ! ここは住宅街なんだぞ!」
「く~そ~、お兄ちゃんめ!」
空の両親は、鍵を掛けて出たのだろう。空は慌てて家を飛び出した為に、鍵を持っていない。家に入るには、両親の帰宅を待つしかない。夕方まで、空を放置する訳にはいかない。
時計を見ると既に午前十時を越えている。ペスカと冬也は、既に学校へ行く気が失せている。そして二人は、空を自宅に連れて行く事にした。
「途中で食材の買い出しをするから、回り道して帰るぞ」
「そうしよう!」
「私はお腹が空いてきました」
歩き出す冬也の左腕を取り、ペスカは空を見ながらこれ見よがしに胸を押し付ける。それを見た空は、冬也の右腕を胸で挟む様に組む。
「空ちゃん、それは私に勝負を挑もうって事ね! OK! 掛かって来なよ」
「ペスカちゃんとでは、戦力差が有り過ぎて勝負にならないよ!」
微笑んでペスカを見る空に対して、ペスカは悔しそうに空を見返す。この状況を、思春期の男子なら喜ばないはずがない。しかし、冬也は声を大にした。
「お前ら五月蠅い! 二人共離れろ!」
「嫌!」
「嫌です!」
いつもなら鉄拳をお見舞いする所だが、両手を塞がれている為、何も出来ない。冬也は、深いため息をついた。
「これは女の戦いだよ、お兄ちゃん。邪乳退散!」
「そうですよ、冬也さん。ブラコン撲滅!」
お互いに引こうとしない美少女二人に、冬也は諦め気味に歩き出した。
両手に花とはよく言ったものである。だが、それは時と場合によるだろう。三人で横に広がって歩ける程、日本の道は広くない。車の邪魔になり、他の歩行者の邪魔となる。
そして、スーパーマーケットに入れば、カートが引けないどころか、他の客に迷惑をかける事になる。
「いい加減、そろそろ離れろ!」
冬也とて、右腕の感触が無くなるのは、少し残念である。しかし、少し声色を変えて言い放った。美少女二人は、冬也を理解しているのだろう。これ以上は、冬也を怒らせると。
しかし、渋々と冬也から離れる美少女二人は、片やカートは私が引きますと言い、片や品物は私が取るねと張り切っていた。
「昼飯は何が食いたい?」
「パスタがいい!」
「パスタにしましょ!」
声がピッタリ合う所が、仲の良さの現れだろう。そして、冬也は尚も尋ねる。
「夜飯は?」
「カレーだね!」
「カレーです!」
声を揃えて答える二人を見て、少し笑いが込み上げる。
「お前ら、いつも仲良いよな」
「そりゃ、幼馴染だし。お兄ちゃんを、誘惑さえしなければ」
「幼馴染だから、仲は良いですよ。年中お兄さんに、発情さえしなければ」
買物を終えて、三人は自宅へ戻る。冬也の両手には、美少女の胸では無く荷物が有る、その美少女二人は、仲良く話をしていた。今朝の出来事を忘れる様に、はしゃぐ二人を見て、冬也は思い出して笑顔を浮かべた。
自宅に辿り着くと三人で買い物を片付ける。冬也は昼ご飯の支度を始め、空が手伝う。それをペスカが恨めしそうに見る。暫くするとペスカは興味を失くし、TVを見始めた。
「いいか? こうやってオリーブオイルに、ニンニクの香りを移して行くんだよ。ゆっくり弱火でな」
「わぁ~、勉強になります。冬也さん素敵!」
楽しそうに料理をする冬也と空を横目に、ペスカは毒づく。
「何が素敵だ! けっ!」
「ペスカちゃん、感じ悪い!」
「うっさい魔乳星人! 美人で性格良くておっぱい大きい空ちゃんは、モテモテなんだから。違う人狙いなよ!」
「それは私の台詞だよ。私はペスカちゃんみたいに明るく無いし、人見知りだし……」
「……仕方ないから空ちゃんは二号さ、あぅ」
悲しそうに俯く空を見て、ペスカが言いかけた所で台拭きが飛んでくる。
「いい加減にして、テーブル吹けペスカ! ごめんな空ちゃん」
無遠慮な言葉を投げ合える間柄は、近親者でも難しい場合が有る。何よりも、ライバルとは対等でなくては成り立たない。親友も同様であろう。
空がペスカを想う様に、ペスカも空を想う。そして、冬也のさり気ない優しさが加わると、やっといつもの日常が戻った感覚になる。俯いていた空は、吹き出すように笑った。
料理を終え、三人で食事をする。ガヤガヤと賑やかな雰囲気に食事が進む。食事を終え片付け終わった所で、再びテーブルに三人とも着く。三人がテーブルに着くとペスカから声が掛かる。
「さて、情報整理と行こうか! 第一回対策会議in東郷邸の開催!」
穏やかだった空気が、三人の表情と共に、少し張り詰めたものに変わる。取り巻く状況の把握と現状の打破に向けた、最初の一歩を三人は踏み出した。