歓喜に沸くエルラフィア軍と三国連合軍。互いの無事を確かめ合うペスカ達。そして、ペスカの下にクラウスが近づき、頭を下げる。
「ペスカ様、各所に連絡致しました。皆、勝利に喜んでおります」
クラウスが差し出した通信機からは、シリウス、モーリス、ケーリア、サムウェルの嬉しそうな声が聞こえて来る。
「詳細は不明ですが、既に千を超えるメルドマリューネ兵を捕縛し、各王都に連行している様です。治療も順調、全てペスカ様の魔法のおかげです」
「そっか」
冬也の言う通りだった。確かに救えた命が有った。クラウスの報告に、ペスカは笑みを深める。クラウスは、ペスカに報告を終えるとこの場を去り、通信機で各所の連絡や指揮を続けた。
やがて、周囲を囲んでいた神々が、次々とペスカ達に近づき、言葉をかけていく。
「よく頑張ったな、お嬢ちゃん」
「凄かったぜ、嬢ちゃん達」
「嬢ちゃん達も坊主達も、良い子だ」
「やるでは無いか、子供らよ。良くぞ奴を倒した」
「人間なのに、やるな。お前達は偉大な英傑だ」
「あんな化け物によく立ち向かったもんだ、すげぇぞ小娘」
「半神の小僧、認めてやるぜ。よく頑張った」
多くの神がペスカと空、冬也や翔一の頭を撫でて、この場を去っていく。
それは不思議な光景だった。
自分の領分にしか興味を持たない神が、人間であるペスカや空に翔一、半神の冬也を認めた。ペスカと空は涙を止め、呆然と立つ事しか出来なかった。翔一は緊張で立ち尽くし、冬也は頭を撫でるなと言わんばかりに、顔を顰めていた。
そして見知った神が三柱、ペスカ達に近づく。
「ご苦労様。冬也君、ペスカちゃん。ラフィスフィア大陸を守ってくれてありがとう」
「お袋!」
「冬也君、お袋じゃ無くて、ママかお母さんって呼んで」
「そうじゃねぇだろ。何言ってやがる!」
「そうね。でも呼び方は重要なの、考えといてね」
女神フィアーナは冬也に言うと、ペスカに視線を向ける。
「ペスカちゃん。私との約束を守ってくれてありがとう。大陸を救ってくれてありがとう。あなたのおかげで、想定以上の命を救う事が出来たわ」
「どういう事だ、お袋!」
「それは、私から説明しよう」
話に割り込む様に、女神セリュシオネが前に出る。
「元々、この大陸には戦乱の火種が溢れていたんだよ」
邪神ロメリアを初めとした混沌勢と呼ばれる神々が原因で、ラフィスフィア大陸には未曾有の大戦争が、起こりかねない状況だった。
戦争のきっかけとなるはずだったのが、大陸中を巻き込んだモンスター騒動。だがペスカの主導で、ライン帝国を始めとした多くの国々が、戦争回避に向かって動いた。結果として大陸全ての国が停戦合意し、力を合わせてモンスターを駆逐し、大陸に平和が齎された。
しかしその平和は、一時的なものに過ぎないと、女神フィアーナを始めとした原初の神々は予想していた。
どれ程に警戒しようと、混沌勢は人々を操りいずれ大戦争を起こさせる。自ら定めたロイマスリア三法により、神々はロイマスリアに暮らす者達に過度の干渉が出来ない。故に女神フィアーナと女神セリュシオネは、平和の起点となったペスカに使命を与え、記憶や経験を持たせたまま転生をさせた。
その使命こそが、邪神ロメリアの討伐である。
泥沼の戦争により混沌勢は力を増し、ラフィスフィア大陸は人が住めない大地になる事は、容易に想像がついた。神々にとっては、今回の結果は最良のものであった。
「納得できなくても、構わないよ。でも、君達は我々の予想を超えて、多くの命を救った。認めてあげるよ」
女神セリュシオネは、そう言い放つと姿を消した。
「照れてんのよ、あの子。役に立つかわからないって、言いきってたからね。みんな、良く頑張ったわね」
優しい口調の声と共に、女神ラアルフィーネが空や翔一、冬也の頭を撫でていく。最後にペスカをぎゅっと抱きしめた。
「頑張ったわね。大変だったわね。本当に偉い子達だわ。神々が半ば諦めかけていた状況を、あなた達が覆したのよ。偉業を成したの。人形みたいなこの国の人間達でさえ、あなた達は助けたの。特にペスカ、あなたの功績は計り知れないわ。誇りに思いなさい」
女神ラアルフィーネは、ペスカを離すと手を振って消えていった。最後に残された女神フィアーナは、ペスカ達を見渡すとゆっくりと言葉を紡ぐ。
「立ち向かう勇気を称えます。仲間を想い守る心を賛します。あなた達の行動が、大陸を救いました」
女神フィアーナは、ペスカに向かい言葉を紡ぐ。
「ペスカ。あなたはその知恵で、世界を豊かにし、大陸に起こり来る戦乱を防いだ。そして、私との約束を守り、ロメリアを倒した。辛い戦いだったでしょう。失ったものも多かったでしょう。でも、あなたの力で救えた多くの命が有ります。あなたの意思を継ぎ、各地で奮闘した勇気ある者達がいます。あなたがこの世界に齎したものは、これからも育まれ伝えられていくでしょう。ありがとう、ペスカ」
ペスカはゆっくりと頭を下げる。
シグルド、クラウス、シルビア、シリウス、モーリス、ケーリア、サムウェルと、この大陸ではペスカの意思を継ぎ、世界を次代に繋げようと奮闘した者達がいた。
シグルドの最後を、ペスカは決して忘れない。クラウスを始め残された者は、平和を求めて戦い続けてくれるだろう。
ペスカは、様々な想いを嚙みしめる様に呟いた。
「終わった、終わったんですね。フィアーナ様」
女神フィアーナは優しく頷くと、空と翔一に向かい言葉を紡いだ。
「異界の住人達よ。あなた達は、友人を守り勇敢に戦いました。平和な日本で暮らしていたあなた達には、辛い戦いだったでしょう。よく挫けずに頑張りました。空、あなたの勇気は誰にも真似が出来ません。翔一、あなたの機転で希望が繋がったのです。あなた達は、私が責任を持って日本に帰すと約束しましょう。ありがとう。空、翔一」
空と翔一は、頭を下げる。空は溢れる涙を拭い、毅然と女神フィアーナに向き合う。翔一は誇らしさで体を震わせ、言葉にならない想いに溢れていた。
怖かった。逃げたかった。でも、戦って良かった。立ち向かって良かった。
ペスカと冬也の助けになれた事が、誇らしかった。大切なペスカと冬也を守れた事が、嬉しかった。
「工藤先輩、やりましたね。私達、ちゃんとやり遂げましたね」
「うん。頑張って良かった」
最後に女神フィアーナは、冬也に向き合った。
「冬也、愛しい息子よ。良くペスカを助けました。あなたは幼い頃からペスカを守り育てました。それが、この大陸の平和を保つきっかけを作ったのです。そして、あなたは我が血を受け、その力を戦いの中で磨き上げました。あなたは立派に神の一員です」
冬也は頭を掻きながら、女神フィアーナに答える。
「いや、神とか何とかってのは、知らねぇよ。俺は大切な妹を泣かす糞野郎を、ぶっ飛ばしただけだ。これからも変わらねぇ。それよりいつ日本に帰れんだよ」
いつもと変わらない冬也の態度に、ペスカは脇腹を突いて、耳打ちをする。
「お兄ちゃん。嬉しいけど、もう少し空気を読みなよ。こんな時は、光栄ですとか言うんだよ」
「やだよ。だって相手は、お袋なんだろ? それに、日本に帰るって重要な事だろ?」
「まぁ、そうだけどさ」
ペスカは深い溜息をつく。そして馴染み深いペスカと冬也のやり取りに、思わず空と翔一が吹き出す。それは達成感よりも、開放感からくる感覚が大きいだろう。
この旅で、様々な事を経験した。それこそ、日本では決して体験できない事を。しかし辛い旅であった。全てが終わり、もう戦わなくていい。
何よりも、日本に帰れる。女神が確約したのだ、間違いは無いだろう。
そして女神フィアーナは、じっと冬也を見つめてから、吐き出す様に話しかけた。
「冬也君。あのね、巻き込まれた空と翔一は、必ず日本に帰してあげる。勿論ペスカちゃんも。でもあなたは駄目よ」
「はぁ?」
「フィアーナ様、何言ってんの?」
「えっ? なんで冬也だけ、帰れないんですか?」
「なんで冬也さんは、駄目なんですか?」
女神フィアーナの言葉に、驚くペスカ達三人と、怪訝な表情を浮かべる冬也。女神フィアーナは、溜息をつきながらも、諭す様に冬也に説明をした。
「だって、あなたはもう神の一員なのよ。日本に帰して、変な影響が出たら困るじゃない」
「いや、あんたはどうなんだよ。日本に来たんだろ?」
「私は神気をコントロールできるもの。それに行く前に日本の神々に、話しを通したし。今の冬也君が日本に行ったら、日本の神々は凄く迷惑がるわよ」
納得がいかない冬也に、追い打ちをかけたのはペスカであった。
「お兄ちゃんが日本に帰らないなら、私も残る~!」
「何言ってんの? お父さんはどうするの?」
「そうだよ、ペスカちゃん。帰らないってどういう事?」
ペスカの言葉に驚き、空と翔一は更に大きな声で叫んだ。
冬也が日本には帰れない。女神フィアーナの説明を聞けば、その理由は納得が出来る。受け入れられはしないけれど。
しかし、ペスカは別であろう。帰れるのだ。それに日本には義理とはいえ、父親がいる。家族がいるのに、この世界に残るのはおかしいだろう。
だが考えてみれば、ペスカにとって真の故郷はどっちなのだろうか。少し複雑な思いで、空と翔一は逡巡する。
ただ当のペスカは、あっけらかんとしていた。
「冒険だよ、お兄ちゃん!」
冬也の腕にしがみついて、明るい笑顔を見せるペスカの頭を、冬也は優しく撫でた。そして女神フィアーナは頭を抱え、深い溜息をついた。
一方、天空の地に戻ったセリュシオネは先の戦いを思い出し、少し首を傾げていた。
「そう言えば、ロメリアの神格は余りにも小さすぎましたね。あれは本当にロメリアの神格だったんでしょうか? まぁ、今となっては確かめる術も有りませんが……」
「ペスカ様、各所に連絡致しました。皆、勝利に喜んでおります」
クラウスが差し出した通信機からは、シリウス、モーリス、ケーリア、サムウェルの嬉しそうな声が聞こえて来る。
「詳細は不明ですが、既に千を超えるメルドマリューネ兵を捕縛し、各王都に連行している様です。治療も順調、全てペスカ様の魔法のおかげです」
「そっか」
冬也の言う通りだった。確かに救えた命が有った。クラウスの報告に、ペスカは笑みを深める。クラウスは、ペスカに報告を終えるとこの場を去り、通信機で各所の連絡や指揮を続けた。
やがて、周囲を囲んでいた神々が、次々とペスカ達に近づき、言葉をかけていく。
「よく頑張ったな、お嬢ちゃん」
「凄かったぜ、嬢ちゃん達」
「嬢ちゃん達も坊主達も、良い子だ」
「やるでは無いか、子供らよ。良くぞ奴を倒した」
「人間なのに、やるな。お前達は偉大な英傑だ」
「あんな化け物によく立ち向かったもんだ、すげぇぞ小娘」
「半神の小僧、認めてやるぜ。よく頑張った」
多くの神がペスカと空、冬也や翔一の頭を撫でて、この場を去っていく。
それは不思議な光景だった。
自分の領分にしか興味を持たない神が、人間であるペスカや空に翔一、半神の冬也を認めた。ペスカと空は涙を止め、呆然と立つ事しか出来なかった。翔一は緊張で立ち尽くし、冬也は頭を撫でるなと言わんばかりに、顔を顰めていた。
そして見知った神が三柱、ペスカ達に近づく。
「ご苦労様。冬也君、ペスカちゃん。ラフィスフィア大陸を守ってくれてありがとう」
「お袋!」
「冬也君、お袋じゃ無くて、ママかお母さんって呼んで」
「そうじゃねぇだろ。何言ってやがる!」
「そうね。でも呼び方は重要なの、考えといてね」
女神フィアーナは冬也に言うと、ペスカに視線を向ける。
「ペスカちゃん。私との約束を守ってくれてありがとう。大陸を救ってくれてありがとう。あなたのおかげで、想定以上の命を救う事が出来たわ」
「どういう事だ、お袋!」
「それは、私から説明しよう」
話に割り込む様に、女神セリュシオネが前に出る。
「元々、この大陸には戦乱の火種が溢れていたんだよ」
邪神ロメリアを初めとした混沌勢と呼ばれる神々が原因で、ラフィスフィア大陸には未曾有の大戦争が、起こりかねない状況だった。
戦争のきっかけとなるはずだったのが、大陸中を巻き込んだモンスター騒動。だがペスカの主導で、ライン帝国を始めとした多くの国々が、戦争回避に向かって動いた。結果として大陸全ての国が停戦合意し、力を合わせてモンスターを駆逐し、大陸に平和が齎された。
しかしその平和は、一時的なものに過ぎないと、女神フィアーナを始めとした原初の神々は予想していた。
どれ程に警戒しようと、混沌勢は人々を操りいずれ大戦争を起こさせる。自ら定めたロイマスリア三法により、神々はロイマスリアに暮らす者達に過度の干渉が出来ない。故に女神フィアーナと女神セリュシオネは、平和の起点となったペスカに使命を与え、記憶や経験を持たせたまま転生をさせた。
その使命こそが、邪神ロメリアの討伐である。
泥沼の戦争により混沌勢は力を増し、ラフィスフィア大陸は人が住めない大地になる事は、容易に想像がついた。神々にとっては、今回の結果は最良のものであった。
「納得できなくても、構わないよ。でも、君達は我々の予想を超えて、多くの命を救った。認めてあげるよ」
女神セリュシオネは、そう言い放つと姿を消した。
「照れてんのよ、あの子。役に立つかわからないって、言いきってたからね。みんな、良く頑張ったわね」
優しい口調の声と共に、女神ラアルフィーネが空や翔一、冬也の頭を撫でていく。最後にペスカをぎゅっと抱きしめた。
「頑張ったわね。大変だったわね。本当に偉い子達だわ。神々が半ば諦めかけていた状況を、あなた達が覆したのよ。偉業を成したの。人形みたいなこの国の人間達でさえ、あなた達は助けたの。特にペスカ、あなたの功績は計り知れないわ。誇りに思いなさい」
女神ラアルフィーネは、ペスカを離すと手を振って消えていった。最後に残された女神フィアーナは、ペスカ達を見渡すとゆっくりと言葉を紡ぐ。
「立ち向かう勇気を称えます。仲間を想い守る心を賛します。あなた達の行動が、大陸を救いました」
女神フィアーナは、ペスカに向かい言葉を紡ぐ。
「ペスカ。あなたはその知恵で、世界を豊かにし、大陸に起こり来る戦乱を防いだ。そして、私との約束を守り、ロメリアを倒した。辛い戦いだったでしょう。失ったものも多かったでしょう。でも、あなたの力で救えた多くの命が有ります。あなたの意思を継ぎ、各地で奮闘した勇気ある者達がいます。あなたがこの世界に齎したものは、これからも育まれ伝えられていくでしょう。ありがとう、ペスカ」
ペスカはゆっくりと頭を下げる。
シグルド、クラウス、シルビア、シリウス、モーリス、ケーリア、サムウェルと、この大陸ではペスカの意思を継ぎ、世界を次代に繋げようと奮闘した者達がいた。
シグルドの最後を、ペスカは決して忘れない。クラウスを始め残された者は、平和を求めて戦い続けてくれるだろう。
ペスカは、様々な想いを嚙みしめる様に呟いた。
「終わった、終わったんですね。フィアーナ様」
女神フィアーナは優しく頷くと、空と翔一に向かい言葉を紡いだ。
「異界の住人達よ。あなた達は、友人を守り勇敢に戦いました。平和な日本で暮らしていたあなた達には、辛い戦いだったでしょう。よく挫けずに頑張りました。空、あなたの勇気は誰にも真似が出来ません。翔一、あなたの機転で希望が繋がったのです。あなた達は、私が責任を持って日本に帰すと約束しましょう。ありがとう。空、翔一」
空と翔一は、頭を下げる。空は溢れる涙を拭い、毅然と女神フィアーナに向き合う。翔一は誇らしさで体を震わせ、言葉にならない想いに溢れていた。
怖かった。逃げたかった。でも、戦って良かった。立ち向かって良かった。
ペスカと冬也の助けになれた事が、誇らしかった。大切なペスカと冬也を守れた事が、嬉しかった。
「工藤先輩、やりましたね。私達、ちゃんとやり遂げましたね」
「うん。頑張って良かった」
最後に女神フィアーナは、冬也に向き合った。
「冬也、愛しい息子よ。良くペスカを助けました。あなたは幼い頃からペスカを守り育てました。それが、この大陸の平和を保つきっかけを作ったのです。そして、あなたは我が血を受け、その力を戦いの中で磨き上げました。あなたは立派に神の一員です」
冬也は頭を掻きながら、女神フィアーナに答える。
「いや、神とか何とかってのは、知らねぇよ。俺は大切な妹を泣かす糞野郎を、ぶっ飛ばしただけだ。これからも変わらねぇ。それよりいつ日本に帰れんだよ」
いつもと変わらない冬也の態度に、ペスカは脇腹を突いて、耳打ちをする。
「お兄ちゃん。嬉しいけど、もう少し空気を読みなよ。こんな時は、光栄ですとか言うんだよ」
「やだよ。だって相手は、お袋なんだろ? それに、日本に帰るって重要な事だろ?」
「まぁ、そうだけどさ」
ペスカは深い溜息をつく。そして馴染み深いペスカと冬也のやり取りに、思わず空と翔一が吹き出す。それは達成感よりも、開放感からくる感覚が大きいだろう。
この旅で、様々な事を経験した。それこそ、日本では決して体験できない事を。しかし辛い旅であった。全てが終わり、もう戦わなくていい。
何よりも、日本に帰れる。女神が確約したのだ、間違いは無いだろう。
そして女神フィアーナは、じっと冬也を見つめてから、吐き出す様に話しかけた。
「冬也君。あのね、巻き込まれた空と翔一は、必ず日本に帰してあげる。勿論ペスカちゃんも。でもあなたは駄目よ」
「はぁ?」
「フィアーナ様、何言ってんの?」
「えっ? なんで冬也だけ、帰れないんですか?」
「なんで冬也さんは、駄目なんですか?」
女神フィアーナの言葉に、驚くペスカ達三人と、怪訝な表情を浮かべる冬也。女神フィアーナは、溜息をつきながらも、諭す様に冬也に説明をした。
「だって、あなたはもう神の一員なのよ。日本に帰して、変な影響が出たら困るじゃない」
「いや、あんたはどうなんだよ。日本に来たんだろ?」
「私は神気をコントロールできるもの。それに行く前に日本の神々に、話しを通したし。今の冬也君が日本に行ったら、日本の神々は凄く迷惑がるわよ」
納得がいかない冬也に、追い打ちをかけたのはペスカであった。
「お兄ちゃんが日本に帰らないなら、私も残る~!」
「何言ってんの? お父さんはどうするの?」
「そうだよ、ペスカちゃん。帰らないってどういう事?」
ペスカの言葉に驚き、空と翔一は更に大きな声で叫んだ。
冬也が日本には帰れない。女神フィアーナの説明を聞けば、その理由は納得が出来る。受け入れられはしないけれど。
しかし、ペスカは別であろう。帰れるのだ。それに日本には義理とはいえ、父親がいる。家族がいるのに、この世界に残るのはおかしいだろう。
だが考えてみれば、ペスカにとって真の故郷はどっちなのだろうか。少し複雑な思いで、空と翔一は逡巡する。
ただ当のペスカは、あっけらかんとしていた。
「冒険だよ、お兄ちゃん!」
冬也の腕にしがみついて、明るい笑顔を見せるペスカの頭を、冬也は優しく撫でた。そして女神フィアーナは頭を抱え、深い溜息をついた。
一方、天空の地に戻ったセリュシオネは先の戦いを思い出し、少し首を傾げていた。
「そう言えば、ロメリアの神格は余りにも小さすぎましたね。あれは本当にロメリアの神格だったんでしょうか? まぁ、今となっては確かめる術も有りませんが……」