家に着いて、自分の部屋に直行する。
 泣きながら帰ったから、涙はもう、乾いていた。

 スマホを取り出し、尚樹くんから何も連絡が来ていないことに心底安堵した。
 今のうちに、今のうちに全部手放そう。
 俺は、手早く彼の連絡先を着信拒否設定にする。
 
 ショートメッセージのアプリを開いたとき、彼とのメッセージのやり取りを思い出として残しておきたい気持ちと、全て諦めろという気持ちが心の中で拮抗していたが、真実を伝えたときの彼のこわばった表情がふいに脳裏に浮かんで、俺は一切の思考回路が停止したまま、削除マークをタップした。

 期末テストが終わったら、もう女装はやめよう。
 そんなことをかろうじて考えて、ベッドに倒れ込んだ。

 明日から始まる期末テストのことなんて、もうどうでもよかった。