「お待たせ」
俺がクロスバイクで公園に着くと、尚樹くんは先に公園に着いてベンチに座って待っていた。
彼とカフェの制服以外でカフェの外で会うのが変な感じがして、急に恥ずかしさがこみあげてくる。
ちらりとキャップのつばを上げて彼の顔を見ると、彼も嬉しそうだったのでほっとした。
「じゅりさんの私服見れて嬉しい」
「ごめんね、可愛い感じの格好じゃなくて・・・」
「いえ、どんな格好してても、じゅりさんは可愛いですよ」
尚樹くんが甘い笑顔でそんなことを言うから、俺はたまらなく嬉しいと感じるのと同時に切なかった。
彼のその言葉は、俺に向けての言葉じゃない。
彼が好きなのは「じゅり」だから。
彼のその優しさと甘さを向けられているのは、俺じゃない。
「うん、ありがとう・・・」
口ではそう言ったけれど、ぽろぽろと涙が頬を伝わっていく。
メイクが取れるから泣きたくないのに。
止まれ止まれ涙止まってくれと思っても、言うことを聞いてくれない。
「どうしたんですか!?」
急に泣き始めた俺を前にしてオロオロする尚樹くんに、ふいに抑えきれない気持ちが口をついて出る。
「尚樹くんのこと、好きなんだよね」
「え!? それって・・・」
呆気にとられる彼の答えを待つ前に、俺は彼にどうしても伝えないといけないことを口早に言葉にした。
「でもごめん。俺、女じゃないんだ。
本当は女装している男だから」
そう言って俺はキャップを取り、ウィッグと地毛をしまっていたヘアネットをバサッと取り外した。
くしゃくしゃっと片手で髪型をならす。
ああ、今日Tシャツとジーパンで来てほんとよかったわ、なんて冷静に考えていた。
「嘘だろ・・・」
彼が目を見開いて口元を覆い、言葉を失った。
一歩後ずさる。
「本当だよ。『じゅり』じゃない。
俺の本当の名前は、滝沢柊二。
お前の隣のクラスだよ。
体育一緒だろ?」
「マジかよ・・・」
彼が確認するように、改めてまじまじと俺の顔を見た。
ようやく学校での俺に気づいてくれただろうか。
俺のことは知っていてくれただろうか。
せめて顔だけでも。
「騙すつもりはなかった。
俺、学校のやつに家業のカフェ手伝ってることバレたくないから、女装してただけなんだ。
お前に言えなかったのもそれが理由」
「・・・・・・」
「お前のことが好きなのは事実だよ。
そこに嘘はない。
お前のことをからかっているわけでもない。
でも、俺はゲイじゃない。
恋愛対象は女性だよ。
だけど、お前だから好きになった。それだけ。
いろいろごめん。
会うまではこんな話するつもり全然なかったけど・・・。
お互い期末がんばろうな。それじゃ」
俺はキャップを目深に被り、ウィッグとヘアネットをベンチの近くにあった公園のごみ箱に叩き捨てて、クロスバイクを全力で漕いで帰宅した。
頬を濡らす涙が風で蒸発し、顔をヒリヒリと焦がしているようだった。
俺がクロスバイクで公園に着くと、尚樹くんは先に公園に着いてベンチに座って待っていた。
彼とカフェの制服以外でカフェの外で会うのが変な感じがして、急に恥ずかしさがこみあげてくる。
ちらりとキャップのつばを上げて彼の顔を見ると、彼も嬉しそうだったのでほっとした。
「じゅりさんの私服見れて嬉しい」
「ごめんね、可愛い感じの格好じゃなくて・・・」
「いえ、どんな格好してても、じゅりさんは可愛いですよ」
尚樹くんが甘い笑顔でそんなことを言うから、俺はたまらなく嬉しいと感じるのと同時に切なかった。
彼のその言葉は、俺に向けての言葉じゃない。
彼が好きなのは「じゅり」だから。
彼のその優しさと甘さを向けられているのは、俺じゃない。
「うん、ありがとう・・・」
口ではそう言ったけれど、ぽろぽろと涙が頬を伝わっていく。
メイクが取れるから泣きたくないのに。
止まれ止まれ涙止まってくれと思っても、言うことを聞いてくれない。
「どうしたんですか!?」
急に泣き始めた俺を前にしてオロオロする尚樹くんに、ふいに抑えきれない気持ちが口をついて出る。
「尚樹くんのこと、好きなんだよね」
「え!? それって・・・」
呆気にとられる彼の答えを待つ前に、俺は彼にどうしても伝えないといけないことを口早に言葉にした。
「でもごめん。俺、女じゃないんだ。
本当は女装している男だから」
そう言って俺はキャップを取り、ウィッグと地毛をしまっていたヘアネットをバサッと取り外した。
くしゃくしゃっと片手で髪型をならす。
ああ、今日Tシャツとジーパンで来てほんとよかったわ、なんて冷静に考えていた。
「嘘だろ・・・」
彼が目を見開いて口元を覆い、言葉を失った。
一歩後ずさる。
「本当だよ。『じゅり』じゃない。
俺の本当の名前は、滝沢柊二。
お前の隣のクラスだよ。
体育一緒だろ?」
「マジかよ・・・」
彼が確認するように、改めてまじまじと俺の顔を見た。
ようやく学校での俺に気づいてくれただろうか。
俺のことは知っていてくれただろうか。
せめて顔だけでも。
「騙すつもりはなかった。
俺、学校のやつに家業のカフェ手伝ってることバレたくないから、女装してただけなんだ。
お前に言えなかったのもそれが理由」
「・・・・・・」
「お前のことが好きなのは事実だよ。
そこに嘘はない。
お前のことをからかっているわけでもない。
でも、俺はゲイじゃない。
恋愛対象は女性だよ。
だけど、お前だから好きになった。それだけ。
いろいろごめん。
会うまではこんな話するつもり全然なかったけど・・・。
お互い期末がんばろうな。それじゃ」
俺はキャップを目深に被り、ウィッグとヘアネットをベンチの近くにあった公園のごみ箱に叩き捨てて、クロスバイクを全力で漕いで帰宅した。
頬を濡らす涙が風で蒸発し、顔をヒリヒリと焦がしているようだった。