「今日は早く寝るぞ」
 そう息込んでお風呂に入り、寝る支度をしていた筈が、私の手にはコントローラー、モニターにはモンスター。
 最近ご無沙汰だったので、オフで一狩りだけ行うつもりが、いつの間にかオンでレア素材狩りをしていた。
 集会所へ帰還すると、チャットが届く。
『ジンオ○ガ行ける?』
 チャットに届くのは、今日何度も見る同じ会話。さっきのモンスターもジンオ○ガだったし、レア素材が出ないのだろう。これは定型文登録しているっぽい。
『おk』
 私も定型文を返し、再度クエストへ。
 角を破壊して尻尾も切ってるのだが、全く出ないらしい。私は何個も出てるんだけどね。
「……姉さん、今日はどうするの?」
 そんなゲームをしていると、弟がノックも無しに部屋に入ってくる。ノックしろって言ってもきかない反抗期の所業だ。
「どうするって、何の話?」
「アニメの話」
「あぁ……昨日あらかた話したし、しばらくはいいかな」
「……そう」
 それで帰るのかと思ったら、何を考えてるのか私の隣に座って、一緒にゲームを見始めた。
「……何してんの?」
「見てんの」
 あ、そ……
 まぁ、こんな行動はたまにあるからいいんだけどもね。気が散るけども。
 そしてそれから一時間程度。このままだと明日も寝不足になると思い始めた時――
『でた。さんく』
 定型文じゃないチャットが入る。
『うい』
 私もそれに定型文じゃない挨拶を送り、互いにログアウト。
 さて、いつの間にか弟がいないが……
 うん、私のベッドの上で漫画を一巻から読み始めてたようで、今は九巻ですね。
「リバース・マジック見てるの?」
「うん。ずいぶん昔の少女漫画だけど、男の俺が読んでも面白いし……ついつい読んじゃうよね」
 昔、知り合いが置いていった少女漫画で、ファンタジー変身物だ。品行方正な主人公が変身して悪を倒す。ありがちで王道なストーリーだが、そこそこ人気があった作品だ。
「ゲーム終わったけど、海やる?」
「……え? そんな難しそうなのできないし」
「んじゃ、お姉ちゃんがしっかり教えてやるから」
「遠慮するよ。それにその言い方、キモイよ」
 うわぁ……お姉ちゃんは地味にダメージ食らうんですけど。
 よし、適当にアニメの感想をツイートしてから寝ようかな。何事も慣れが必要だし。
「ってことで、私は寝るから、海は帰っていいよ」
「――え? せっかく待ってたのに? はぁ……」
 えぇ……待ってたって何を? そして何故そんなジト目……? 思春期こわい……