「今日は絶好調ね……」
 翌日の教室。私は窓際方向へ視線を巡らせていた。
「え……? 何が……?」
 あ、主語が抜けたね。
 私は目線だけで何を示しているのかを答えた。
「あ……そういう……」
 神宮寺くんが私の目線を追うと、そこには多数に囲まれるめぐの姿があった。
 昨日、主人公を再形成したおかげか、昨日よりも純度の高い主人公がいた。
「……」
「ん?」
 神宮寺くんが何かを言いたげに、私の方を向いてモジモジしていた。もちろん目は合わせないけども。
「どしたの?」
「あ、あのさ……俺も……ツイッター……やってみた」
「お!?  凄いじゃん。神宮寺くんが手を出すなんて」
「……ん」
「それでどう? 反響とか」
「……全く」
「あぁ……」
「……」
「どんなの呟いた?」
「……こんな……の」
 神宮寺くんは私の方に近寄って、スマホを見せる。
「……」
「……どう?」
『美○さんの3DCGの出来が神。歌も雰囲気にピッタリ合致。絶対に○ちごちゃんは叶わないと思うだろう。いや、しかし――』
 めっちゃ饒舌なのね……しかもキャプチャ貼ってるし……
「神宮寺くんってこんな話すんだ……てっきり一言や二言かと思った……」
「……うん……あ、まずは……無印一期から書いてみた」
「無印? ……あぁ、アイ○ツの一作目ってことね」
「……ん」
「無印一期のアイ○ツは知らないけど、うん、熱い思いは伝わってくるよ」
「……え? ……知らない……の?」
 驚愕の表情をして、私の目を真正面から見つめる。
 ――えっ? 私と目を合わせた……だと!?
 私は急いで目を逸らす。止めてくれ。目を合わせようとしないでくれ。人見知りにそれは難易度が非常に高い。しかも相手がイケメン男子だと尚更厳しいと言うのに……! ってか何故、同じ人見知りなのに、ここで目を合わせられた……!?
「し、知らないなんて……だって、ラブ○イブの一期は見たって言ってたのに……全く同時期のアイドルアニメとして……竜虎の争いを繰り広げたと言うのに……」
「あ、うん、そうね……」
 これは面倒なやつだ。急に饒舌になった。オタクの習性のアレだ。深入りする前に、さっさとツイッターの話に戻すことにする。
「あ、うん、まぁ、とりあえず、せっかくだからフォローしとくよ。うん。神宮寺くんの見ておく」
「……え? ……あ、うん……じゃぁ、俺も……フォロー……する」
 急に大人しくなった神宮寺くんを不安に思いながらも、私たちは相互フォローとなった。
 お互いに身バレするような発言は絶対にしないよう話し合いながら。
「あ……いいねが付いてる」
 私のアニメの感想に、いいねが複数付いてるのに気付いたようだ。
「うん……とは言っても、大体付けてくれる人は決まってるんだ。それに、私もこの人の感想は同意見だから、いいねを付けるよ」
「楽しそうだね……」
「神宮寺くんも楽しくなるって……レアなアニメだけも、きっと――」
「レア? アイ○ツがレアだって……言うの?」
「あ、いや、ごめん。いや、そうじゃない、言葉を間違えただけで――」
 アイ○ツは神宮寺くんの地雷。うん、覚えた。