「で、仕事内容はここで終わり。」
仕事を全部言い終わった時に時計を見てみるとちょうど12時だ。お昼だ。皆が時間を確認するとお昼休憩に入っていった。
「ありがとうございました!!」
「じゃあお昼だから休憩入っていいよ」
私もお昼ご飯を食べよう。リラックスしよう。正直午前中は教育係をしてあまりお腹は空いていないのだが。

私は弁当を食べるために自分の鞄の中を探したがない。弁当がない。しまった。朝鞄に入れるのを忘れてしまったようだ。
まぁでも忘れたら午後は食事なしに働けばいいだけの話だ。それぐらいできる。どうせ死にはしない。なので私は弁当を忘れたことによるダメージは少なかった。
「先輩!!一緒にお昼ご飯食べませんか?仕事の相談もしたいので‥」
誰か話しかけてきたと思ったら陽斗くんだった。何故私なのだろうか。彼のコミュニケーション力なら他の人に話しかけて一緒に昼ごはんを食べたり相談したりすることは容易なことだろうに。しかもよりによってこんな時に。
「私今日弁当忘れたんだよね」
「え?」
「だから一緒にご飯は食べられないけど仕事の相談とかはできるよ」
「お腹とかは空かないんですか?」
「空くよ」
「午後大丈夫なんですか?」
「このくらいは大丈夫だよ」
陽斗くんは何故かお昼ご飯を自分の机に置いて私の机の近くに自分の椅子を持ってきて仕事の資料やさっきまで取っていたメモを持ってきた。そしてネクタイを締めて私に質問をしてきた。その質問は陽斗くんの見た目とは裏腹に真剣な質問でありまっすぐな相談だった。

「ありがとうございます!!!」
そういう陽斗くんの声がオフィス中に広がった。私もその声量にびっくりしたものの、このオフィス中にいた人たちが私たちに瞬時に振り向いた。
「めっちゃ力になりました!!!」
私はとても当たり前なアドバイスをしたつもりなのだが、そんな声を出すほど力になったのか。
「あー冴さんか。」「あの人なら完璧で的確なアドバイス出るから納得だよな〜」
あらゆるところが声が聞こえてきた。私はただ簡単なアドバイスをしているだけだ。そんな的確なアドバイスをしているつもりはないと心の中で一人で呟いていた。

「ところで冴先輩、本当にお昼ご飯なくていいんですか?なにか買ってきましょうか?」
「大丈夫だよ持ってこようとしたお昼ご飯も大した量じゃないし」
「さーえちゃん!!今日も来たよ!だーれだ!!」
母の声より聞いている声の主が手のひらで私の目を隠した。