「柊陽斗です!!特技は人を笑わせることです!!今日からこの会社でめっちゃ働くのでご指導お願いします!!!」
そう言った彼は勢いよくお辞儀した。周りが拍手する。新入社員が入ってきた。元気がありそうな子だ。
「元気がある子ね〜」「あの子のおかげでこれまで以上に活気が溢れそうね」
私が働いてる会社はアットホームらしい。私が入りたての時は先輩たちがたくさん話しかけてきた。
「じゃあ今日からよろしくな陽斗くん。君の机はあそこだ。教育係は〜‥‥冴!頼めるか?」
その声と同時に先輩と同僚が私に目を向けてきた。新しく入った子も私の方を向いている。
「わかりました」引き受ける理由もないが断る理由もない。
「冴さんなら大丈夫でしょ」「業績一位だもんね〜」
「じゃあ今日もみんな頑張ろうな!!」部長のその声と同時に先輩や同僚、後輩が自分の机に行き仕事を始めた。

新しく入った子が近づいてくる。
「先輩今日からよろしくお願いします!!」
声量とは裏腹に礼儀正しいなと思った。さっきよりも顔が近い。身長は私より少し大きいぐらいでハキハキしている。
「よろしく。え〜っと‥‥」
「あ!自分柊陽斗って言います!!陽斗くんって呼んでください!」
「分かった」
新人の教育係になるのは初めてだから何をしたらいいのかがわからない。
「私は雪乃冴っていうからまぁ冴さんとか冴先輩ってみんな呼んでる」
「よろしくお願いします!!冴先輩!!」
目が輝いている。私が入社したての時もこんなキラキラしていたのだろうか。
「先輩は趣味とかあるんですか?」
「なんでそんなこと聞くの?」
純粋な疑問だ。今出会ったばっかりの人に何故そんなことを聞くのだろうか。
「‥‥?自分の教育係はどんな人なんだろうなーって知りたいんです!」
益々意味がわからない。「知りたい」とはどういう感情なのだろうか。
「趣味はないよ」
私がそう言った時陽斗くんは目を丸くした。何故だろう。
「じゃあさっそく仕事の説明していくねー」

私は普段している仕事の内容を着々と陽斗くんに話していった。何も難しいことはないのに陽斗くんはこう聞いてきた。
「‥先輩ひとつ質問いいですか?」
「何?」
「先輩はこの仕事の内容どうやって覚えたんですか?」
気にしたこともなかった。会社に入りたての時すでに先輩から言われたことは全てその場で覚えてそれが当たり前だと思って過ごしてきた。
「言われたことを片っ端から普通に頭に入れてるだけだよ」
陽斗くんは不服そうなのか顔を手で隠している。
私は陽斗くんに苦手意識を持っていた。何故なら、意味がわからない言動が多いからだ。それとも私が新人の教育係に合ってないのだろうか。私はそれ以降も続く頭の片隅でずっと考えていた。