♢毎日制裁の刑



「鬼山、今日は刑務所へ向かうぞ」

 エイトは銀色の姿になり、光を放ちながら闇夜に消える。これから、二人の人生を変える一大仕事にとりかかるのだ。依頼人と仇を討つ相手の人生をかけた重要な任務だ。

「人を刺す気分は最高か?」

 半妖のエイトが突如刑務所にいる服役中の男の前に現れた。この男は、心身耗弱状態ということで、弁護側は情状酌量を求めているらしい。

「誰だ?」

 表情を変えない人殺しは冷静だ。

「そうだな、俺は正義の味方、死神だ」

「とうとう幻覚かぁ。どんどん刑が軽くなるってか?」

 男は愉快な表情をする。

「これから、精神がおかしくならないような魔法をかけてやる。精神がおかしくなったら減刑になっちまうだろ?」

「俺が、おかしくなったふりをするかもしれないぞ」

 男がにやけながら何も恐れていないそぶりを見せる。

「めった刺しにされる夢を毎日見られるように妖術をかけておく。でも、朝になると一瞬でそのことを忘れてしまうから、精神は保たれる。そして、嘘をつけない妖術をかけていく」

「何をわけのわからないことをいっていやがる」

 少々いらっとした様子を向ける受刑者。

「制裁!!!!」

 エイトは死神の銀色の光を受刑者に当てる。少し驚いた顔をした受刑者。

「毎日めった刺しの串刺しにしてバーベキューを楽しもうかなぁ」

 裏家業の鬼山は案外鬼対応で、残酷なことを平気で有言実行する。

 大きな剣を持ち、躊躇なく受刑者の体を何か所も刺す。しかし、今回は夢という設定なので、受刑者は本物の恐怖を味わうが、体に異常はきたさない。しかし、その後、そのことを朝には忘れてしまうので、傷みも恐怖も忘れてしまう。しかし、毎晩、制裁が続くという仕様だ。終わらない物語のようなものだ。しかし、本人は忘れてしまい、嘘をつかないという特殊な妖術によって、刑務官に本当のことを話してしまう。

 よって、嘘をつけなくなった男は、女性をめった刺しにしたという事実を自身の口から正直に話す。話したくなくても勝手に話してしまう。そして、心身耗弱になることはない。それは、夜に毎日自分が遭っている惨劇を忘れてしまうからだ。男は、よって死刑になる時期が予定より早まることになった。というのもめった刺しにしたという被害者は複数人おり、無差別的で残忍極まりない犯行という理由だ。

 受刑者の死刑が早まった真実の理由を知るのはチーム半妖だけであり、受刑者自身も毎日めった刺しにされる痛みと恐怖を味わうのだが、翌朝には忘れる。因果な報復を受けていることすらも忘れているということで、表沙汰になることはない。どんな探偵も警察も妖術を解き明かすことなんて不可能なのだから。