絶望を感じていたあの頃、泉澄と出会う前は何もかも諦めていた。何をしても何をされても仕方ないと自分の運命に抗えなかった。
病魔に蝕まれ、残り少ない余命宣告をされた時、この世に生まれて来たことが間違いだったとさえ思ってしまった。
だけど私は泉澄と出会い、母親と住んでいたアパートの窓から願っていた、いつか誰かに愛される日が来るといいなという願いが叶った喜びを感じ、そして初めて訪れる人を愛するが故の不安も知った。誰にも話したことの無い叶わないと思っていた夢も、彼のお陰と自分を信じ、努力をする事で実現することが出来た。
「~♪」
「お、夜に口笛か。蛇が出るな」
「出るわけないよ。ただの迷信。むしろ見てみたい」
フフッとお互いに笑い、星が綺麗な夜空の下、手を繋ぎながら口笛を吹き家路に帰った。
夜に口笛を吹いても占いが最下位でも今日も明日もきっと幸せだろう、だってそんな気がする。幸せか幸せじゃないかなんて決めるのは自分次第だもん。
──そうだよね、泉澄
──当たり前だ
病魔に蝕まれた私があやかしの白鬼に花を手向ける
「完」