高二の冬、飲食店でバイトをしていた時のこと。
 団体客が入店したのでレジ前へ急いだ。人数を数えて、広い席が空いているかを確認する。
「八名様ですね。お席は……」
「七人だよ?」
 先頭に立っていた男の人が首をひねる。
 失礼しましたと軽く頭を下げて、もう一度数え直した。
 ──あれ?
「あ、申し訳ありません。お子様も入れて八名様でよろしいですか?」
 私が改めて言うと、男の人も後ろにいる人たちも、きょろきょろと辺りを見回した。
「ちょっとお姉さん、後ろの子は俺らと一緒じゃないよ」
 ──え?
 確かに、彼らの後ろには幼い子供を連れた家族連れが並んでいる。
 だけど、そうじゃない。
「どうしたの? 七人だよ、早く案内しなきゃ」
 一緒にバイトをしている莉子が私に耳打ちした。
 ──ああ、そっか。
 納得すると同時に頭を切り替えて、訝る彼らを席へと案内した。

 退勤時間になり休憩室へ入ると、すぐに莉子が私に声をかけてきた。
「さっきの人たち、すぐ後ろに子供いたからわかりにくかったよね」
 莉子は私へのフォローのつもりで言ったのだろう。だけど、私が見た子供は後ろの家族連れではない。団体の先頭にいた彼の腕に手を絡めた、小さな女の子がいたのだ。
「うん、だね。次から気をつける」
 後日バイト先の先輩から聞いたのは、数年前に店のすぐ前の道路で起きた交通事故で亡くなった、小さな女の子の話。
 今までも何度か小さな女の子の目撃情報はあったらしい。