高二の夏休み、友達数人で瑠衣の家に泊まった日のこと。
深夜までリビングでテレビを観ていたとき、途端に分厚いものを引きちぎったような、ものすごく鈍い音が鳴り響いた。
全員が一斉に小さく悲鳴を上げ、息を呑んでそれぞれ顔を見合わせた。シンと静まり返ったリビングに、テレビの音だけが響いていた。
ややあって、音の正体を突き止めるようにみんなでリビングを見渡す。
「……うそ」
いち早く音の正体をつかんだ瑠衣が呟いた。いや、おそらく見当がついていたのだろう。私たちは瑠衣の視線を追った。
「え……なんで? ありえなくない?」
震える声で言った莉子に、私たちは答えられなかった。いや、声が出なかったと言ったほうが正しい。
瑠衣の家には、なぜか勝手に開いてしまう扉がある。壊れているわけではない。カチャ、と音を立ててしっかり閉まるのに、放っておくとなぜか開くのだ。
この日もすでに一度開いたため、気味が悪いよね、いっそのこと完全に封鎖しちゃおっか、と半ば冗談半分でガムテープを貼っていたのだ。ほとんど使っていない物置部屋なので、開かなくても問題ないだろうと、布のガムテープをがっつり。
それなのに。
扉が開いている。
ガムテープが引きちぎられている。
「ちょっとヤバイかも」
瑠衣が呟いたのを合図に、私たちは家を飛び出した。
しばらく経ってから勇気を振り絞って瑠衣の家へ戻ったが、見間違いのはずもなくやはりちぎられていた。瑠衣が「ママが帰ってくるまでうちにいないほうがいいかも」と言ったので、別の友達の家へ向かった。
のちに瑠衣から聞いた「ちょっとヤバイかも」の意味は、あんな現象が起きたのは初めてだったこと、いくら霊でもガムテープを引きちぎるなんてよほどの力が必要なはずだと思ったことが理由だそうだ。いわゆる悪霊のようなものの仕業なのか、あるいは単なるお調子者の悪戯なのか、自分では判断がつかなかったのだと。
その後も何度も瑠衣の家には行ったが、あんな体験はこの日が最初で最後だった。



