それを見つけたのは偶然だった。
私は小説家の端くれだ。新作のネタ探しのため、過去に考えていたネタのメモを整理していたとき、ふと作家デビュー前に利用していたWEB小説サイトの存在を思い出した。
思いつく限りのIDやパスワードを入力してなんとかログインすると、未完結で非公開の作品、つまり中途半端なまま放置していた作品ばかりがずらりと並んでいた。自身の飽きっぽさに呆れつつ、過去作を読み返すという一種の拷問作業に耐えていたとき、それが目に留まったのである。
私は普段、恋愛や青春をメインに書いている。だがその作品はホラーだった。表紙には『体験談』と書いてある。これもまた、未完結のまま非公開になっていた。
私はもとよりホラーが大好きだ。ネタのメモにはホラーもいくつかあった。
しかし、体験談など書いただろうか?
何年も前の作品なのでよく覚えていない。はて? と思いながら内容に目を通していくうちに、あやふやだった記憶が徐々によみがえってきた。間違いなく私が書いたものであり、そして確かに私の体験談だった。
断言はできないが、私は先天的に霊感が備わっている人間ではないと思う。ただ、おそらく様々な条件が重なり奇妙な体験をしていた時期があった。その体験を小説として記録していたのだ。
読んでみると、懐かしさも相まってなかなか楽しめた。しかし同時に、ふと疑問が芽生えた。
なぜ未完結のまま放置し、非公開にしたのだろう?
私の記憶が正しければ、この作品は公開していたはずだ。実際にPV数がゼロではないし、感想をくれた読者もいる。しかもほとんど完成していた。残り数話と『あとがき』が下書き保存されているだけ。最終確認してから公開し、完結させる予定だったのだろう。
長編小説であれば途中で行き詰まることなど常だが、これはあくまで体験談だ。それに一話完結型なのだから、更新が途絶えたとしても非公開にする必要性はないように思える。
不思議に思いながら再び記憶を辿ってみても、非公開にした理由は思い出せなかった。
まあ、私のことだ。どうせ途中で飽きたのだろう。
再び自分に呆れつつ、せっかくなので作品を編集しながら現在利用しているWEB小説サイトに移行しようと思い立った。
タイミングがいいことに、季節はちょうど夏だ。なんの面白い仕掛けもない単なる怪談話など仕事には到底繋がらないだろうが、ただ夏の風物詩として読者に楽しんでもらえたらいい。
幸いスケジュールは落ち着いているし、私にとっても息抜になる。ほぼ完成しているものを一旦Wordに落として編集するだけだ。すぐに完成させられるだろう。
そう思った私は、ある程度編集が進んだタイミングでWEB小説サイトへの掲載を始めたのだった。



