カランと氷が溶ける音がする。
冷たいウイスキーを飲みながら一階の店で葵とどうでも良いことを雑談する。
「なぁ葵」
「ん?就職でもするのか?」
「ちゃうわ!」
言われると思った返答。就職はめんどいやん。
あと、人間関係しんどいし。女の子口説かれへんし、、、。
「僕、今お前の考えてること分かったわ、、、」そっと、ため息をつく葵。
「就職ちゃうねん。、、、千鶴のことや」
「、、、」
「本当にどないしたら良いんやろ、、、」
「、、、」
今まで生きてきた中で、俺の心をここまで掻き乱した奴は千鶴が初めてや。別に恋愛的な意味としてじゃなくて、なんやろ。
親が子供をハラハラした気持ちで見る感じに近いんかな?
「、、、お前、この仕事についてどう思う」
「あ?」
何時死ぬかわからん仕事。報酬は結構良いけど、人を殺すんは普通の人間やったら無理や。
「まぁ、俺達はその『人としての道』から外れとんねん。俺も、葵も」
「勝手に僕まで巻き込むな」
両者無言。
氷の溶けるカランという音が台詞の代用品だった。
しばらくして口を開いたのは葵だった。
「お前はやっぱり嘘つきだな」
「は?何言っとんねん。俺が嘘つくと思うか?」
「思う」
室温が五度くらい下がった気がした。
「実際にはそう()()()()。、、、神崎茜は息を吐くようの嘘をつく。だから、何が嘘でも可笑しくない」
「、、、」
「千鶴も可哀想だよな。、、、お前が一番初めについた嘘を今もまだ信じてるんだからな」
一番初めについた嘘。
確か出会った時に『オレらは千鶴を一人にせんからな!』って言った気がする。
「ケッケッケ、良いやん。それで千鶴が幸せなら、、、俺はいくらでも嘘つきになれるで。なぁ、葵。こういうの何て言うか知っとる?」
「、、、」
何も答えない。
その代わり、葵の顔から表情が静かに遠のいていった。視線はピンで留られたみたいに俺の方に向けられている。
すまんな、葵、千鶴。堪忍してくれや。
()()()()や」