①物語の設定・主要キャラクターの説明


・物語の世界観

 とある星の、不老不死の種族が暮らすひとつの国。同じ星に住む他国の種族との間で、不老不死を得ようとする小さな争いが絶えず起こる。その不老不死の種族が、あらゆる争いから身を守る術を学ぶための学校に、現代人の主人公が突然現れる。


・主要登場人物のキャラクター紹介

色(シキ)
 18歳。賢くなく、弱い。だが、どんなときでも『絶対に諦めない力』を持つ男の子。
 祖父が異世界に行った事があり、幼い頃から冒険譚をずっと聞いてきた。祖父は話と一緒に、謎の文字を見せてくれたが読めず、祖父が亡くなったとき、祖父の部屋に行くと謎の文字が光っていて読み方が解り口にする。目の前に現れたのは祖父に聞いたままの異世界で、話を信じていたので戸惑いはなく、何か困り事があるから僕が来たのだと、力は人並み以下でも、タフな心身と諦めのなさで、色々な人々の心を開いていく。


カエ先生(カエルレウム)
 見た目は二十歳半ば、実年齢は祖父より遥かに上の男の人。学校の先生で、生徒のシキたちに術を教える立場にある一人。実力は国の中でもトップクラスに強い。
 長身痩躯。美形だが、常に帽子を目深に被っているためあまり知られていない。先生たちの内でもっとも教え方が厳しく、態度は冷ややかなので、生徒に嫌われがち。
 いきなり自分の部屋に現れたシキを保護し、その世界にいられるようにした。実はシキの祖父の先生でもある。物事に他人を巻き込みたくなく、他人に頼れない性格で、あらそいにおいては誰もケガさせないのが信念。諦めないシキに現実をぶつけて特別辛く当たりながらも、祖父と同じ『諦めない力』を持つシキを、誰よりも信じている。


ルブルム
 実年齢よりも見た目が大人の、18歳。成績は中の上。動く前に考えるタイプで、武具の扱いと型における技術が高く、口調はちょっぴり荒い。仲間想いの男の子。
 母が、シキの祖父と最後に仲間になったというゆえんから、今度は一番最初に友達になろうと決めて、声をかけた。
 ウィリデとは今まで口をきいたことはなかったが、シキを大切な友達として、シキの大切な友達として、意気投合している。
 シキと違い疑り深いが、シキの言う理想には共感している。
 初めは、『祖父の孫のシキと一番に友達になる』との気持ちからだったが、祖父は関係なく、他の誰でもない『シキ』の人となりを好いて、シキを信じ、ずっとそばにいる。


ウィリデ
 実年齢よりも見た目が子供の、18歳。成績は中の下。考える前に動くタイプで、不器用で細かなことはうまくできないがとてつもなく力が強く、口調はのんびりしている。仲間想いの女の子。
 父が、シキの祖父と最後に仲間になったというゆえんから、今度は一番最初に友達になろうと決めて、声をかけた。
 ルブルムとは今まで口をきいたことはなかったが、シキを大切な友達として、シキの大切な友達として、意気投合している。
シキと同じくおおらかだが、思考はシキより現実的なところがある。
 初めは、『祖父の孫のシキと一番に友達になる』との気持ちからだったが、祖父は関係なく、他の誰でもない『シキ』の人となりを好いて、シキを信じ、ずっとそばにいる。


②冒頭部分のプロット


・0話

 現代で、唯一の家族である祖父の冒険譚を聞いて育った、『ごくふつう』の主人公、色(シキ)。
 ある日、大好きな祖父が亡くなって、部屋に行くと、よく見せてもらっていて一度も読めなかった謎の文字が光り輝いており、理解できて言葉にする。
 それは異界へ飛ぶ呪文(若き祖父は知らずに『遊びで作って』発した)で、次の瞬間、夜の暗い部屋の宙に光の輪が出現し、床に落ちるシキ。同じ部屋にいた軍人のような格好をした男(カエ先生)が驚きながらも騒がず、シキの名前を聞く。祖父に聴いた状況とそっくりだと感じつつ男と見詰め合い、名を言うシキは、内心高揚しはじめる。
 男は一瞬瞳を和らげたあと、立て、とシキを冷たく見下ろし続ける。
「何者で、何の理由でここにいるのか、説明してもらう。皆の前で」
 微塵も怖じ気づかずに立ち上がり、はい! とニコニコ返事をして、男に、邪魔だと鬱陶しげに言われても、サッと道をあけ、先を行く男に元気よくついていくシキ。
 学校の校長は、前例の祖父を知っていて、勿論祖父を知らない人の反対もあったが男の口添えもあって、学校の空き部屋に居住を認められたシキは、学校の生徒としてこの世界で生活してゆくことになる。


・1話

 祖父に伝え聞いて詳しく知っているが、校長より改めて、シキは今いる世界についての説明を受ける。
 複数の種族がいてそれぞれが国をつくっており、ここは不老不死の種族が住む国であること。(ついでに小話で、外見は好きな年齢で止められる・個人の能力や容姿は様々であると知る)。不老不死の血は異なる種族の血と交わると不完全になるが、その事実はいまだに聞き入れてもらえず、不老不死を求める他国の種族との小さなあらそいが絶えないこと。数十年前に大きなあらそいが起きようとしたとき、和解を成したのがシキの祖父であることを聞く。
 次の日、混乱を防ぐために(校長は、『あの』祖父の孫といった期待がかかりすぎないよう配慮して)校長の孫として生徒に自己紹介する段取りで、素直に異界人であると笑い顔で話すシキ。
 しん、と静まり返る。
 しかし、生徒の母や父の多くは祖父の友人で、驚きの静けさはたちまち大きな歓声に変わる。
 祖父と最後に仲間になってくれた男の子と女の子ふたりのそれぞれの夫婦の子供、ルブルムとウィリデが、シキに友達になろうと声をかけて、ルブルムとウィリデはシキの最初の友になる。


・2話

 生徒の大半は、賢く強く、笑顔で絶対に武に頼らず、決して諦めないで対話し続け、他国の種族とわかりあう道を開いた偉大な祖父の像を孫のシキに抱いていた。
 だが実際は、笑顔で諦めない以外祖父に似ず成績がてんでよくないシキに、次第に冷たくなったり遠巻きにしたりする者もいはじめる。
 シキはそれもそうだと受け入れ、ちっとも気にしない。シキの支えになりたいと友達になった二人はシキの心優しさに、シキの代わりに怒るなり気にさせないようにするなりして、好きでそばにいる。
 そうして、三人で学校の廊下を歩いていると毎回の如く外や中で、シキが異世界に来て最初に会ったカエ先生が、生徒たちにきつく教えているところを見かけ、ルブルムが「やりすぎだし好きじゃねえ」と嫌そうに言い、ウィリデが「ちゃんと言ってもらえて助かるよ~」と好きそうに言う。
 シキは祖父の話から、カエ先生が良い人だと知っているので、良い人だよねと明るく相槌を打つ。
 そう言うシキの、カエ先生の特に厳しい教えで生傷ばかりのシキの体を見遣り、友人ふたりはしかめ面と笑み顔になる。
 数日後、街の外にいた民が襲われる小規模のあらそいがあってそこに居合わせたカエ先生は、民を全員護って負傷する。
 シキは、学校の保健室(不老不死の種族は、軽い傷は即座に、重い怪我は1日で完治する。保健室は病院と同程度設備が充実しているので、カエ先生はこちらに運ばれた)に行き、塞がった傷口の包帯をとってもう仕事に戻ろうとしている様子のカエ先生に、
「先生がみんなを守ったこと、みんなは知ってるんですよね」
 と笑って言う。
「誰も知らない。オレは違うことでヘマをしただけだ」
 上着を羽織り、まっすぐ告げるカエ先生に、シキはむっとした表情になる。
「そんなのダメです! 先生は、良い事したんです、だったら、ちゃんといわなくちゃっ!」
 と保健室を出ていこうとするシキに「余計な事をするな!」と一言怒るカエ先生。
「必要な事です!」
 背筋をピンとして真っ向言い返すシキ。
「……いいんだよ。いいんだ。」
 顔付きを歪めてどこか辛そうに静かに口にするカエ先生に、さすがにシキもひとに言うのを控える。が、同時にあることを決意する。


・3話

 相変わらずカエ先生は殊更容赦なく、シキは明朗に教えを受ける日常の、午前の授業が終わり、午後は休みで何もない日。
 学校にいたシキは、なんだか周りが慌ただしいのに気付き、生徒の間で、先日襲ってきた種族が再び現れたとの話を聞き付けて、ふと他所を見ると、カエ先生が駆けて行く姿に急いであとを追う。
 街の外にいた数十名の他国の種族の前に、武器を構えて立つ人達よりもさらに前方に立つカエ先生の横に、周囲の制止を振り切り追い付くシキ。
 まさか足音がそうだと思わずカエ先生はビックリし「帰れ」と慌てて叫ぶのに対し、
「ぼくはっ…ぜぇ、はぁ、せっ先生の役には立てないけど、ぅうっ、そばにいるって、決めたんです……」
 カエ先生がとりわけシキに厳しくしたのは、シキが諦めないことを理解しているけれどもシキは一番弱いために、痛みや辛苦を知ることによって、あらそいに近づけさせまいとしてのことだった。
 現状多数の相手に守り抜ける自信がなく、カエ先生はわざと、足手まといだ、お前は邪魔だ、と酷いように言うが聞かず、不意に相手の攻撃が当たりそうになるシキ。
 カエ先生が必死で助けようとする寸前、ウィリデとルブルムの声がして、シキを攻撃しようとした相手の種族は後ろに転がる。
 ウィリデとルブルムは、シキを追ってきていた。
 シキは二人に感謝し、危険だからと言いかけるが、普段努力していて、かつ退かない覚悟がある瞳のウィリデとルブルムに、はるかに弱くカエ先生にまもってもらってる自分がいえないかとへらりと笑う。
「お前たち……」
 人数が増えてしまい苦しい顔をするカエ先生に、シキとルブルムとウィリデたちは、
「先生(あんた)に鍛えられたんだからだいじょーぶ」と答え、
「……怪我だけはするなよ」
 とカエ先生は諦めてそれだけ強く願い、
「はい!」
「おお!」
 と返事をする生徒三人を何度か庇いつつ、カエ先生とシキとルブルムとウィリデの四人組は、相手を傷付けずに縛る。
 不老不死の不可能を説き、半信半疑ながらも武器を奪われているため一時的に納得した風になった相手の種族を解放して、国に帰らせる。
 その日、少し落ち着いたあとで、
「守ってくれて、サンキューな…」
「ありがとうございます、先生。」
 カエ先生に、ルブルムとウィリデが礼を述べ、シキはカエ先生に笑顔で、
「先生は、良い人です。僕は、先生をひとりにはしません。僕は、もっと努力して、もっと強くなります。今日来たひとたちと、向き合えるくらい、強く。」
 カエ先生はシキを眺めながら、祖父と違いすこぶる弱く、しかし同じしたたかな意志の笑み顔と言葉に、優しく微笑する。
「……しごかなくちゃね」
「はい! よろしくお願いします!」
 カエ先生は無事なウィリデとルブルムと、シキを視て、にこりと柔和に笑み崩れる。


③今後の展開

 祖父にとってこの世界でできた仲間は大切で、でも、自分の世界に大切な家族が居たので現代に戻ったけれど、シキは現代に肉親はおらず、なにより一度決めた事は守る(先生をひとりにしない)ために、この世界に残る。
 それから、シキとウィリデとルブルムたちは、この世界のひとたちと仲良く暮らしていけるように、学校や住民に、不老不死になるのは不可能だと伝えるのにあれがいいかこれがいいか尋ねたり考えたり、たくさんの現実味に乏しいアイデアを出して、(カエ先生は生徒の考えた方法の役に立ちたくて、本当に協力したいが、どれもすごく突飛で実現出来ない)カエ先生に却下されても考え続け、やがてその熱意に、みんなが一緒になって考えてくれるようになる。
 カエ先生は微笑む回数が増し、いくらか素直に話してくれる形で優しくなって、ウィリデとルブルムとシキはしょっちゅうそばにいて、じき傍目にも自然になる。
 ビシバシしごかれてもシキはちょっとも強くならないが、タフな心身で、一緒にいてくれるみんなの気持ちを強い力にして、『不老不死は不可能だと伝えることを諦めず』、他国の種族の攻撃を頑丈さでもって『怯まず』、何度も相手と『正面から向き合う』ことで、少しずつわかりあえていく、希望のある、おわり。