僕の返事を聞いて、彼女は本当に僕の隣に腰を下ろした。


桜木さんと僕は同じ高校で、同じクラス。

……ではあるが、こんな風に言葉を交わしたのは今日が初めてである。

私服だったから誰かわからなかったっていうのは本当だけど、それよりも特に親しいわけではなかったし、桜木さんに声をかけられるとは夢にも思わなかったから、リアルだと受け止めるのに時間がかかったというのが正しいかもしれない。

彼女には友だちがたくさんいて、いつも楽しそうに笑っている。

明るくて可愛くて、誰とでも仲良くて人気者で……って、ラノベのヒロインみたいな子ってリアルに存在するものなんだなっていつも頭の片隅で思ってた。

僕は桜木さんと正反対……とまではいかないけれど、なんせ人見知りだから、親しい人としか話せない。

教室の隅でスマホを持ち寄って、ゲームをやったり好きな音楽の話をしたりおすすめの漫画をプレゼンしあったり、気の知れた仲間と盛り上がってるくらいで。