毎日暑すぎて、ついに幻聴が聞こえるようになったのか?

それとも、ここにいる事自体が夢か幻か……?


「桜木さん、何の冗談……」

「冗談なんかでこんな事言わないよ。……さっきも言ったけど、見慣れた自転車と後ろ姿が見えたから、声をかけたんだよ?」


見慣れた自転車……と、後ろ姿。

確かに、そんな事言ってたけど……。

それで、急に僕の好きな人に立候補とか、何でそんなぶっ飛んだ思考になる?

もしかして、仲間内でのゲーム?

陽キャが陰キャに告白したら陰キャがなびく説……みたいな?

……自問自答にむなしくなってきた。


「後ろ姿が見えたからって……罰ゲーム受けてる?」

「そんなんじゃないよ。……確かに、藤原君にとっては急な事かもしれないけど、私にとってはずっと、藤原君のいる高校生活って毎日ドキドキしたり、サイダーみたいに弾けたり……してるんです」


桜木さんの顔が赤い。

声のトーンも少しずつ落ちていく。