「そういえば、美琴先輩って関西出身ですか?」
「ん?ああ、そうやよ。」

 ある放課後、パートのみんながそれぞれの諸事情により、クラリネットパートは二人だけで練習していた。

「なんだか、流ちょうな関西弁がすごく素敵で…」
「——そんなん言うてくれたの、星那ちゃんが初めてや。」
「…え?」

 どこか悲しそうな顔をした美琴の顔を見て、星那は驚いた。

「うちな、小三まで大阪に住んでてん。小四でここら辺に引っ越してきたんよ。」
「そうだったんですね。」
「関西弁なんてここらで話したらビックリされるやろ?それに、うちは『何か方言で喋って』みたいなこと言われるのが一番嫌いやった。」
「…」
「だから、ある時期を境に関西弁を喋るの辞めたんよ。」

 初めて聞いた話だからか、戸惑ってしまう。

「でも、美琴先輩って今は関西弁を話していますよね…?」
「うん。ゆかり先輩が自分を誇れって言うてたから。自分を隠すのはもう辞めてん。この髪も目もな。」
(笑顔の輝きがすごい。)
「ていうか、星那ちゃんって、私のこと見ても驚かんかったよな…」
「あ、はい。綺麗だなとは思ったけど…」

 そう、美琴は金髪で青色の目をしていた。

「え?ホンマにそれしか思わんかったん?」
「それだけ、ですね…」
「——すごいな、あんたは…」
「えっと、生まれつきです…よね?」
「うん。父さんがアメリカ人で、母さんが大阪人。うちは英語喋るより関西弁喋る方が好きやけどな!」
(多分、いやきっと、美琴先輩は色々なことで苦労していたんだ…)

 星那も生まれつきの茶髪で、昔から色々と聞かれたことはあった。

(まあ、私の親はどっちも日本人だから、別にそこまででしかないけどね。)

 星那の中ではそこまで髪や目の色は気にするものではない、みんな同じ“人”という結論で終わっていたため、美琴の髪や目の色は気にするほどではなかった。

「そういや、星那ちゃんも綺麗な髪やなあ…」
「そ、そうですか…?」
「うん。すっごい綺麗。」
「ありがとう、ございます…?」

 少し返答に困ったけど、綺麗と言ってくれるのは嬉しい。

「よーし、練習頑張るぞー!」
「はい!」