お待ちかねの花火の打ち上げ時刻まで、あと5分。

「ここ!すごく見やすいの!」

 六華にそう言われて案内された場所は…

「え?ここって私有地じゃ…」
「こんな所に入っちゃ悪いんじゃ…」
「大丈夫。家の土地だもん。」

 ——流石は六華様。

「ここ、この前おじいちゃんに作ってもらったの。花火が見やすいようにって。」

 そこには、可愛らしいログハウスが建っていた。

「造りもちゃんとしてるから安心して。ベランダがあるからそこで見よう!みんなの分の椅子もあるからね。」
(——金持ちっ…)
「始まるまで中に入ってくつろごうよ!」

 そう言った六華は慣れた手つきでログハウスの鍵を開けた。

「わあ…」

 入ってすぐの場所には机と家具があった。

「キッチンとバスルームも作ってもらったから、ここでお泊りもできるよ。部屋もいくつかあるはずだから。」
「す、すごい…」
「広い…」

 私もどこかの山に別荘みたいな場所を建ててもらいたい…

(父さんの機織り工房だったらあるけどね…)

 そんなことを考えていると、六華が最高の提案をしてくれた。

「部屋、見に行く?」
「「うん!」」

 ♢ ♢ ♢

「ここが私のお気に入り。ベッドも大きいし、オシャレなんだよね。」

 案内された部屋は、すごくオシャレだった。とても広いわけではないけど、ベッドは大きいし、何なら天蓋も付いていた。窓は大きく、オシャレなカーテンが吊るされている。

「こういうの、造ってほしい…」
「分かる…」

 結乃と二人でそんな話をしていると…

“ドーン”

 花火、始まった…!

「わあ…」
「綺麗…」

 花火は、今いるこの部屋からでも、とっても綺麗に見える。

「もう、電気を消してここで見よっか。」

 大きな窓から見える花火は、大輪の花のようだった。

「もうすぐコンクールだね。」
「その後は秋祭りだね。」
「また明日からクラブだね…」

 ——花火が、このまま終わらずに咲き続けてくれたらいいのにな…

(そういえば、明日のクラブの時にオーボエでも吹こうかな。日頃の練習も兼ねてね。)

 そんなことを考えながら、3人で花火を見続けていた。