『本日は日本各地で猛暑の予想と…』

 梅雨が明けてからは一段と暑くなり、猛暑日も続いている。

(盛夏服、着よっかな…)

 どうしよう…本当は着たいけれど、これで盛夏服を着ている人が誰もいなかったらすごく恥ずかしい…

「あ、結乃と六華に聞けばいいんだ。」

 スマホを取り出し、結乃と六華に聞いてみると…

『せいなも着るの⁈なら良かった、私も着ようか迷ってたの!』

 結乃…感謝。

『私も着よっかな。暑いし。』

 六華も…

(やっぱり、みんな考えることは一緒か。)

 ♢ ♢ ♢

「んー…やっぱり星那が一番似合ってるよね…」
「——同感。」

 結乃・六華曰く、私が盛夏服を着て白のつば広麦わら帽子をかぶるとお嬢様のように見えるらしい(個人の感想、とのこと)。

「それ、本当に思って言ってる?」
「もちろん。」
「六華の言う通り。」

 歩いている間は暑いけど、やっぱり今が一番楽しい。

「あれ?結乃、今日って朝練は…」
「もー、今日からは休みって私も星那も言ったよ!」
「うん、今日からテストまでは休みだよ?」

 六華に現実を見せる私たちと、現実を見せられてどんよりとする六華。

「そうだ…すっかり忘れてた…」
「まあ、もう私たちも小学生じゃないからね。」

 学校が近づいてきたとき、私はふと、あることを思い出した。

「そういえば、この制服の色って『ムラサキクンシラン色』でしょ?」
「へー、そんな色なんだ。」
「あー、なんか聞いたことある気がする…」
「この花の花言葉ってね…」

「『知的な装い』って言うらしい。」

 私の謎の雑学を聞いた二人の反応は…

「何だか、すごく制服にあっている気がする。」
「確かに。」

 うん、私は何を言いたかったの?

「星那は知的な装いより、お嬢様な装いって感じだけどね。ねー、六華!」
「確かに、結乃の言う通り。」
「もう、そんな褒めても何も出てこないよ?」

 こんな雑談も、いつかは大切な思い出になるのかな…

「じゃあ、また後でね。」
「うん、またね。」

私たち三人は、クラスが違う。だから、一緒に行けるのは廊下の分かれ道まで。

「まあ、クラスは隣だけどね。」
「確かにね。」

 ♢ ♢ ♢

「おはよう、薫ちゃん。」
「誰⁈え、星那ちゃん⁈」
「?ど、どうしたの?」
「あ、ごめん…普段もお嬢様みたいな星那ちゃんが、お姫様みたいで…」

 ——すべて個人の感想…である。

(みんな口裏を合わせている気が…)

 うん。何だか、やらせ感がすごい…

 ♢ ♢ ♢

「おはよ、有島も今日から盛夏服?」
「おはよう、今日とっても暑かったからね。」

 隣の席に仲間がいるのは心強い。

「ていうか、千鶴さん…何だかお嬢様みたいで可愛い。」
「そ、そう?」

 そういや、男子にこんなことを言われるのは初めてな気がする。

(まあ、あいつにとっては凪ちゃんの方が可愛いだろうけどね。)

 でも、やっぱり…嬉しいかも。